文学

『西南役伝説』

西南役伝説 (講談社文芸文庫)作者: 石牟礼道子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/03/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る 石牟礼道子のこの本は、20年以上にわたって書き継がれた10篇ほどの短い文章からなっているのだが、その中でも…

『ヴァレンシュタイン』

このごろ私どもが眼にするのは、 かつて百五十年前、ヨーロッパの国々が、 悲惨な三十年戦争の尊い成果として喜び迎えた、 堅牢なはずの古い秩序が崩壊している姿です。 そこで、いまいちど詩人の空想を動員して、 あの暗かった時代を皆さま方のお眼の前によ…

『死の家の記録』

ドストエフスキーの『死の家の記録』は、先日記事を書いた『二つの同時代史』のなかで激賞されていたので興味があったところ、たまたま近所の古本屋の店先で、中村白葉訳による岩波文庫の旧本(第一版は戦前に出ているが、現物は戦後の刷)が一冊50円で売…

『ヴィルヘルム・テル』

ヴィルヘルム・テル (岩波文庫 赤 410-3)作者: シラー,桜井政隆,桜井国隆出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1957/09/05メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 岩波文庫の『花田清輝評論集』を読んでたら、花田がシラーの『ヴィルヘルム・テル』(180…

『マイケル・K』

マイケル・K (岩波文庫)作者: J.M.クッツェー,くぼたのぞみ出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2015/04/17メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見るこの小説は、南アフリカ共和国出身のノーベル賞作家、クッツェーの代表作の一つと言われているものだ…

レイシズムと弱い父

今年の読書の中で、とくに記憶に残っているのは、ジャン・ジュネの戦後の作品の翻訳を続けざまに読んだことだ。 『シャティーラの四時間』、『アルベルト・ジャコメッティのアトリエ』、『恋する虜』、それに『公然たる敵』という諸作品である。

『嘔吐』

嘔吐 新訳作者: J‐P・サルトル,鈴木道彦出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2010/07/20メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 54回この商品を含むブログ (30件) を見る たいへん有名な小説だが、今回初めて読んだ。 鈴木道彦氏によるこの新訳は、去年出版され…

『プルーストを読む』を読む

プルーストを読む ―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)作者: 鈴木道彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2002/12/17メディア: 新書購入: 5人 クリック: 23回この商品を含むブログ (24件) を見る

プルーストと戦争

失われた時を求めて 10 第五篇 囚われの女 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)作者: マルセル・プルースト,鈴木道彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/01/19メディア: 文庫 クリック: 19回この商品を含むブログ (7件) を見る失われた時を求めて 12 第七篇 …

プルーストの欲望

夏の間読むのを中断していた『失われた時を求めて』(集英社文庫)を、第9巻「囚われの女 ?」から再開。失われた時を求めて 9 第五篇 囚われの女 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)作者: マルセル・プルースト,鈴木道彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/0…

警官の孤独

以前にも書いたことがあると思うが、テレビ時代劇の『鬼平犯科帳』シリーズが好きである。

分析の土台

失われた時を求めて 7 第四篇 ソドムとゴモラ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)作者: マルセル・プルースト,鈴木道彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2006/10/18メディア: 文庫 クリック: 12回この商品を含むブログ (8件) を見る

チェーホフの『曠野』

子どもたち・曠野 他十篇 (岩波文庫)作者: チェーホフ,松下裕出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/09/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (11件) を見る

庄野潤三氏の作品から

作家の庄野潤三氏が亡くなった。 http://www.asahi.com/obituaries/update/0922/TKY200909220111.html 好きな作家の一人である。 比較的初期の作品になると思うが、気になっているものを、二つ紹介しておこう。 いずれも、「戦後」と呼ばれる時代の日本の一…

『闇の左手』

闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))作者: アーシュラ・K・ル・グィン,Ursula K. Le Guin,小尾芙佐出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1978/09/01メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 388回この商品を含むブログ (103件) を見る

『一九八四年』

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/07/18メディア: ペーパーバック購入: 38人 クリック: 329回この商品を含むブログ (350件) を見る どうしても立ち直ることのできない出来事…

再掲・『フランドン農学校の豚』

かなり前の記事ですが、最近またこのお話のことを思い出しました。 http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20051110/p1 「いやですいやです。」豚は泣く。「嫌だ?おい。あんまり勝手を云ふんじゃない。その身体は全体みんな、学校のお陰で出来たんだ。これからだっ…

怒りのエコノミー

書きあぐねている人のための小説入門作者: 保坂和志出版社/メーカー: 草思社発売日: 2003/10/31メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 16人 クリック: 393回この商品を含むブログ (133件) を見る 保坂和志は、現役作家中もっとも好きな作家で、この本もたい…

ベックのカフカ批判

きのうの記事のなかで、エヴリン・T・ベックという有名なカフカ研究者のインタビューが、粉川哲夫著『カフカと情報化社会』という本に収められていることに触れた。カフカと情報化社会 [ 粉川哲夫 ]ジャンル: 本・雑誌・コミック > その他ショップ: 楽天ブッ…

カフカ賞とイスラエル問題

村上春樹のエルサレム賞受賞(受諾)とその講演のことが話題になっている*1けれども、国際的な文学賞の舞台にこの作家がはじめて登場したのは、06年のフランツ・カフカ賞だろう*2。 *1:村上さんの講演には、ぼくも感動を覚えた。 *2:ちなみに、前年の受賞者…

「ハイファに戻って」

ハイファに戻って/太陽の男たち作者: ガッサーンカナファーニー,黒田寿郎,奴田原睦明出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/02/19メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 60回この商品を含むブログ (13件) を見る この作品集を通読して、ひとつとても印象…

「太陽の男たち」

ハイファに戻って/太陽の男たち作者: ガッサーンカナファーニー,黒田寿郎,奴田原睦明出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/02/19メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 60回この商品を含むブログ (13件) を見る 過去十年の間、彼のしたことはただ待つこ…

希望の卵

モジモジさんの記事を読んで知った、村上春樹氏のエルサレム賞授賞式についての報道。http://www.asahi.com/culture/update/0216/TKY200902160022.html 村上さんは、授賞式への出席について迷ったと述べ、エルサレムに来たのは「メッセージを伝えるためだ」…

もう一度、村上氏の講演に触れます

村上春樹氏の講演だが、共同通信による要旨を見た。 http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090216/acd0902161022003-n1.htm

文学・宗教・政治

村上春樹氏への働きかけを批判する人って、たいていはイスラエルの行動に「苛立ち」だの「憂慮」だのを抱いているらしいが、その人なり(要は自分なり、ということであろう)のやり方というものがあったり、行動できない事情がある場合もあるのだから、その行…

われらが心の内なるイスラエル

村上春樹さんの「エルサレム賞」受賞に、一ファンとして言っておきたいことhttp://d.hatena.ne.jp/fujipon/20090127/p1 ある目的を果たすための道は、必ずしもひとつではないし、人にはそれぞれ、自分のやりかたがあるのです。 それが他者に致命的なほどの痛…

どうする春樹?

村上春樹、エルサレム賞受賞おめでとう!!! http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20090125/p1拝啓 村上春樹さま ――エルサレム賞の受賞について http://0000000000.net/p-navi/info/column/200901271425.htm

『光州の五月』

光州事件に深い関わりをもつ人物でもある作家の手になるこの小説は、たんに歴史の事実に材をとったというだけのものではなく、社会や個人にとっての「暴力」という複雑で壮大な主題に肉薄した文学作品になっている。 光州の五月作者: 宋基淑,金松伊出版社/メ…

『エレクトラ 中上健次の生涯』

この本は、たまたま古本屋の店先で見かけて(出版は去年)、そんなに期待もせずに読み始めたのだが、とくに後半は引き込まれて読んだ。 ルポとしても、創作としても、また作品論・作家論としても、すぐれていると思う。たいへんな力作である。 中上については…

『苦海浄土』

やっと読了。新装版 苦海浄土 (講談社文庫)作者: 石牟礼道子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/07/15メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 175回この商品を含むブログ (71件) を見るこの滅茶苦茶有名な作品を読むのも初めてだし、水俣病とその患者さんたち…