2005-12-01から1ヶ月間の記事一覧

希望がまったくないわけではない

去年もそうだったが、年が変わるこの時期になると、アカルイ感じのことを書きたい気分になるのは、それだけ現実の状況が厳しくなってきてる反動だろうか。 人も家も、暗いあいだはまだ大丈夫だ、と反語的に書いたのは太宰治だ。むやみにアカルさを語りだすと…

『ミリオンダラー・ベイビー』再考

今年も終わろうとしているので、この一年に観た映画のなかから印象的なものをあげておきたい。 といっても、「すぐれた作品」とか「面白かった映画」ということでは必ずしもなく、今年を象徴するような作品。 その意味では、クリント・イーストウッド監督の…

『ブレストの乱暴者』からの引用・クレル

ブレストの乱暴者 (河出文庫)作者: ジャンジュネ,Jean Genet,渋澤龍彦出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2002/12/01メディア: 文庫 クリック: 10回この商品を含むブログ (19件) を見る 二十五歳の肉体から生れた最近のクレル、わたしたち自身の心の暗い…

敗北しない英雄はいない

クリストフ・ルメールとハーツクライは、見事に「万年二着」の汚名をそそいだ。 これまでのレース振りとは一変、スタート直後に三番手につけ、そのまま好位を確保してレースを進めた。直線ではいち早く先頭に立ち、外から追い出してくるディープインパクトが…

有馬記念予想

ディープインパクトが外を回る競馬しかしないのは、単純に馬体が小さいためだろう。前走、菊花賞時の馬体重は444キロ。おそらく今回(有馬記念)出走の16頭のうち、もっとも数字の小さいのがこの馬だろう。競走馬の大型化の趨勢は顕著で、なにしろ牝馬の…

歓待の掟

もうひとつ引用。 歓待の掟、歓待という一般的な概念を支配する形式的な掟は、逆説的な掟であり、堕落(=倒錯)の可能性を持ち、また堕落(=倒錯)させる可能性を持つような掟として現れてきます。(ジャック・デリダ『歓待について』廣瀬浩司訳p63)

『ブレストの乱暴者』からの引用・怒り

(前略)いま、彼のすべての怒りは、傷つけ痛めつけられて、ぐにゃぐにゃになり、少年をして、その無残な有様を嘆かしめるほどのものになっていた。怒りに対して依怙地になればなるほど、怒りは溶け、生まぬるくおだやかになり、やがて死に絶えてしまうものら…

伊藤仁斎・忠恕

伊藤仁斎『論語古義』のなかの、『論語』の里仁篇一五の一節への「注」と「解説」から。 現代語訳は今回も、貝塚茂樹責任編集による中央公論社『日本の名著』シリーズの伊藤仁斎の巻のものを用いる。 (前略)子出ず。門人問うて曰わく。何の謂いぞや。曽子の…

島尾敏雄『贋学生』

贋学生 (講談社文芸文庫)作者: 島尾敏雄出版社/メーカー: 講談社発売日: 1990/11/05メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (9件) を見る だが一体木乃伊之吉は何を目的で私たちに近づいたのだろう。 私たちは最初から眠っていたし、木乃は最初か…

伊藤仁斎・「仁を好む」と「不仁をにくむ」

江戸前期の儒者、伊藤仁斎は、ぼくがもっとも好きな思想家の一人だ。 この時代の日本の思想については、この後の封建的な社会の秩序や制度を準備したという側面だけから見られがちだが、むしろこれ以前の数百年がどういう時代だったかをよく考えてみるべきだ…

師走の仁川

日曜は久しぶりに競馬場に行き、馬券は買わないで寒風のなか、競馬新聞を片手にパドックやレースをずっと見ていた。午後から日陰になる阪神競馬場のスタンドは、六甲から吹き降ろす風のため、0度ぐらいに冷え込んでいたのではないかと思うが、冬競馬はこの…

阪神牝馬Sを考える

すでに有馬記念で頭がいっぱいでピントが定まらないが、一応明日の阪神のメイン「阪神牝馬ステークス」を考えてみる。 今年の中央競馬は牝馬が大活躍。特に三歳牝馬は大きな注目を集めたが、その主役の一頭②ラインクラフトが、得意のマイル戦で確勝を期する…

阪神牝馬Sを考える・決定版

やっぱり往生際が悪い気がするので、予想をはっきりさせておこう。 馬券を買い続けてきて思うことのひとつは、外れた場合に「自分がどうして(また、なにに)負けたのか」がはっきりする買い方をするようにしたい、ということだ。これが分かるようにしておくこ…

『ブレストの乱暴者』からの引用

今回も引用のみ。 ジャン・ジュネ作、澁澤龍彦訳『ブレストの乱暴者』(河出文庫)から。ブレストの乱暴者 (河出文庫)作者: ジャンジュネ,Jean Genet,渋澤龍彦出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2002/12/01メディア: 文庫 クリック: 10回この商品を含むブ…

朝日杯回顧

今日も家でテレビ観戦。 向こう正面で予想に反してペースが落ち着いているのが分かって、あれれ、と思った。勝ったフサイチリシャールには、だから展開に恵まれた面はある。とはいえ、ゴール前で二着馬に迫られて交わされなかったのを見ると、速いだけではな…

『泥棒日記』抜粋・皮肉さについて

スティリターノという人間の鋭い性格は、心臓を刺し通す短剣、というイメージにこのうえなく相応しかった。悪魔の力、その我々に対する威力は、悪魔の皮肉さにあるのである。悪魔の魅力は、あるいは、我々に対するその冷淡さにほかならないのではあるまいか…

朝日杯予想

アルーリングボイスがなんでとんだのか、整理できないままに一週間が過ぎてしまった(嘘)。 今週は、中日新聞杯にエイシンテンダーが出ず、また鳴尾記念にローゼンクロイツが出走しないのは、味気ないことだ。競馬というのは、自分が中心にして考えていた馬が…

A・ヒューイット「敵と寝ること」

ファシズムにおける全体主義的欲望が瓦解するのは、それに対立するものの重圧によってではなく、自らが作動させる欲望のメカニズムの重圧によってなのだ。 (p123) アンドリュー・ヒューイットの、ジュネをめぐる秀逸な論考「敵と寝ること」(太田晋訳)…

『アカルイミライ』

アカルイミライ 通常版 [DVD]出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2003/06/27メディア: DVD購入: 2人 クリック: 31回この商品を含むブログ (190件) を見るいまBIGLOBEのホームページで無料で全編を視聴できるので、この映画を久しぶりに見た。 封…

ジュネ・国家と家族

明日から、小旅行(?)のため、数日更新しません。 阪神ジュべナイルFは、アルーリングボイスは強いだろう、まあ。 やはり河出文庫から出ているジュネの『ブレストの乱暴者』という本を買ったのだが、別に古本屋で珍しい本を見つけたので、先にそちらを読も…