『ブレストの乱暴者』からの引用

今回も引用のみ。
ジャン・ジュネ作、澁澤龍彦訳『ブレストの乱暴者』(河出文庫)から。

ブレストの乱暴者 (河出文庫)

ブレストの乱暴者 (河出文庫)

人間は侮辱を受けると、昂然と頭をもたげ、身体ごと前進し、平手打ちや拳固を加えたくなってくる。全身を躍動させ、緊張させ、跳びあがらせる。つまり、それが生きるということだ。また人間は侮辱を受けると、頭をうなだれ、身体をよろよろさせ、ついには倒れて死んでしまうような場合もある。わたしたちは生きんとする姿勢を美しいと称し、死なんとする姿勢を醜いと称する。けれども、さらにもっと美しいのは、さっさと生きて死んでしまう姿勢だろう。                (p64)


ジュネの作品を「戦の文学」と呼んだ、坂口安吾の直感は正しい。