虚妄の「激突」

クローズアップ2008:09年春闘 不況下、賃上げで激突(毎日新聞)

http://mainichi.jp/select/biz/news/20081217ddm003020172000c.html


分かりきったことだけど、一応書いておく。
派遣労働者の首切りが本格化する直前、連合は雇用よりも賃上げを要求の主眼にして春闘を戦うという方針を決定していた。
あのとき、賃上げの要求を取り下げて「雇用の確保」一本にしぼる決定をしていれば、経営側はいまのように大手を振って首切りを断行できなかったのではないか。
企業の決定をとめられないまでも、非正規雇用労働者を含めた社会全体に対する、それはひとつのメッセージにはなった。
そのメッセージを発することを放棄して、企業がリストラを行いやすいようにパスを送る結果となった。
「非正規雇用を削減する一方、正社員だけ賃金を上げて社会の理解が得られるのか」(トヨタ幹部)というふうな台詞を、経営側が口にできるようにしてやったのである。
これは、最大限好意にとった言い方をしても、「労組は自分で自分の首を絞めた」ということである。「大企業と大労組指導部の共犯行為」と言われても、仕方がないだろう。
連合だけでなく、ニュースを見ていると、全労連もあまり変らないようである。


もっとも許しがたいのは、この信じられないほど(共犯的でなければ)融和的で能天気な「労使関係」が、「激突」だとか「深刻な対立」だとかいう言葉で、マスコミによって報じられていることである。
現在の状況下で、労働運動として何を守るべきかも見出せない、こんな方針決定しかできない指導部の下で組合に入って働いている労働者の人たちこそ、「自分の首を絞めているのだ」ということに気づくべきだ。