八ヶ月は長くない

きのうの昼間、母親の世話をしながらテレビを見てたら、『徹子の部屋』に上野千鶴子が出ていて、最近出した『おひとりさまの老後』という本の話をしていた。


そのなかで、(老人が?)寝たきりになってから亡くなるまでの期間が平均で八ヶ月だというデータを紹介していた。
いったいどんな計算をしたらそんな短い日数になるのか分からないが、ともかく統計では「八ヶ月」が平均なのだそうである。


ぼくが驚いたのは、上野がその数値を、「人間という哺乳動物はゆっくりと死ぬ」ということの例証として示していたことだ。
「寝たきりになってから死ぬまで八ヶ月」というのは、ぼくの感覚では、むしろ異様に短い。
もちろん裏返せば、動けなくなってから死ぬまでの時間が長ければ、それだけ世話をする人手やコストが必要だということだから、社会学者としてそれを整備する必要性に注意を促すというのは分かるが、どう考えてもこの数字を「人はゆっくり死ぬ」という実感の根拠として示す感覚には合点がいかない。


上野はこの数字を示す際に誤って、はじめ「寝たきりになってから平均で八年」と言ってしまい、黒柳は「そんなにかかるのか」と驚いていたが、ぼくは八年でもそんなに長いと思わん。
もちろん、当人なりの死生観とか美学のようなもの、それから世話をする側の大変さということはあるだろうけど、だからといって、年老いて寝たきりになってから死ぬまでの期間が八ヶ月という数字を「ゆっくり」と感じるという感覚は、ぼくには理解しがたいと感じた。
自分が世話をする側でも、される側でも、それは同じである。


もっとも、寝たきりになってからもうじき一年になる母親が、このくだりを聞いてどう思うか気になったので、すぐチャンネルを変えてしまったから、その後上野がどういう話をしたのか分からないことは書き添えておく。