NHKスペシャル24「対北朝鮮なぜ圧力より対話か」

MLで教えてもらって、標題の番組の再放送を見た。
最後のナレーションが、完全に「他人事」という感じに聞こえたのが気に入らなかったが、全体としては、とてもよく取材されていて、韓国の社会の事情をきちんと伝えていたと思う。


朝鮮半島がずっと分断状態にあるということ、今も軍事的には休戦状態であり、韓国の人たちは戦争の脅威を日常的に感じているということなどが、あらためて思い起こされた。ぼくも韓国には何度も行ってるし、韓国人の友人も多いが、そういうことは忘れがちである。
宥和政策に批判的な人たちと、支持する人たち、どちらも激しく主張し、ぶつかりあう。その姿が、あの国の人たちが背負ってきた苦悩を表わしているようにも見える。
軍事独裁時代の「反共教育」の様子というのも、話にはよく聞くが、実際に映像で見たのは初めてだった。やりきれない悲惨な歴史だが、もはや「他人事」ではない。


またとくに、お父さんが拉致されている男の人の姿が、強く心に残った。拉致被害者の残された家族が、ずっと韓国社会では「いじめ」や差別の対象になっていて、いわゆる宥和政策(太陽政策)によって、そうした偏見(拉致された人は自分の意志で「北」に行ったのであり、残された家族は「アカの家族」、スパイだ、という)がはじめて和らいだという話は、初めて聞いた。
心のなかでは自分の父親を奪ったものたちに対して、言い表せない憎しみを抱いているはずだが、それをあらわすことが「解決」につながらないことを知っているという、あの苦悩の表情。この人の心のなかにあるほんとうの「解決」とはいったいなんなのだろう。
それは、離散家族の、朝鮮戦争のときに生き別れた弟との再会を待ち続けるおばあさんの心情とも重なるものではないかと思う。個人の心情であって、個人だけのものとも言い切れないような、巨大な取り返しのつかない傷を受けた人たちの共通の、なにか集団的な感情、痛みのようなもの。
昨日書いた、平良夏芽さんのことも、ちょっと思い出した。
こういう人たちだけが、「平和」という言葉の真の意味を知っているんじゃないかと思う。