先日のエントリーに、紹介した本のなかで「神的暴力」という言葉が話題になっているのを書きましたが、ベンヤミンの「暴力批判論」における「神的暴力」と「神話的暴力」との対置について、わかりやすく書かれたサイトがあったので、紹介しておきます。
http://www.thought.ne.jp/luhmann/baba/gj/gj04.html
これは馬場靖雄さんという方の文章で、「暴力批判論」そのものについてのものではなく、「暴力批判論」の読解を含むデリダの『法の力』という本におさめられた、やはり重要な論考について書かれたものですが、上記の対置が非常に簡明に整理されて述べられています。
法の措定であれ維持であれ、ともかく何らかの目的のために行使される暴力を神話的暴力(die mythologische Rechtsgewalt)と呼び、純粋にそれ自体のために行使される、何ものをも目的としない暴力を神的暴力(die gottliche Gewalt)と呼ぶ。
ベンヤミンは、「神的暴力」という言葉によって、いわば人間の暴力や破壊への衝動の純粋な姿を肯定的に描きだそうとしたわけで、この試み自体は、非常に価値の高いものであると思います。
しかし、馬場さんの文章でも述べられているように、「神的暴力」は、破壊的で衝撃的であり、恐ろしいものだということもよく言われていて、『法の力』のデリダも(これ自体、衝撃的な読解だと思いますが)、「神的暴力」を、ホロコーストにむすびつけています。
これは、「神的暴力」が、「たんなる生命をこえる価値」にかかわるものであり、「血の匂いがなく」、そして「犠牲を受け入れる」暴力だとされている点からきている受けとられかただと思います。
ちなみに、「暴力批判論」について、ぼくが以前試みた読解の文章はこちら。
ベンヤミンが20代の前半に書いたこの神秘的なまでに魅惑的な短い文章は、ぼくの読解力をはるかに越えるもので、いま自分のエントリーを読み直してみると、まるで読めてなかったことがわかります。以前これを読んでもらった方には申し訳ないし、あらためてひっぱりだして載せるのも恥ずかしいのですが、暇のある方は誤読の例として、上記の文章と読み比べてみてください。
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