パウル・クレー展

兵庫県立美術館で開催中のパウル・クレー展、今月23日までの開催ですが、先日見に行ってきました。
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1509/index.html


上のホームページのなかの「展覧会構成」というところをクリックすると、詳しく紹介されてますが、クレーの生涯の作品を六つの角度から光を当てて展示するという構成で、これがほんとうに分かりやすくて面白かったです。
ぼくは特に、これまでは近代的な画家という印象が強かったクレーが、デーモニッシュ(魔的)とかメルヘン的と呼ばれるような、ぼくから見ると土俗的な要素を強く持っていたことを知ったのが新鮮でした。
とくに、「裸体」という絵では、裸婦の肖像の胸のところに薄く横たわった女性の姿が透けて見えるように描かれ、またそのお腹は妊娠しているように見えます。この絵が象徴的で、クレーは、埋葬や妊娠という事柄に強い関心を持っていたことが他の絵からもうかがえるのですが、それは、生の世界が、われわれの現在だけの平板なものではなく、「死者」と「(まだ)生まれざる者」との共存によって形成されているのだという、クレーの感じ方を示しているもののようです。
クレーが、そういう世界のあり方を絵画によって表わそうとしていたのだと考えると、その前後の作品も、これまでとは大きく違った見え方をしてくるように思えました。
それはもちろん、彼が生きた時代や社会の状況とも深く結びついたものだったと思います(ベンヤミンと同じ年に亡くなっていることに、初めて気づきました)。

それとクレーは、最晩年には鉛筆で、ヘタウマみたいな変な走り書きのような絵をたくさん描いていたようです。これはPCで見るとそれなりに見えますが、実物を見ると、子どもの落書きと見分けがつきません。ぼくはどう鑑賞したものか分かりませんでしたが、ただ、同時期には緻密に構成された作品も相変わらず作られており、決して晩年になって何かの「境地」にたどり着いたわけではなく、それらが併存してるところが、いかにもクレーらしいのかも知れません。
この「落書き」自体は、面白いです。