反差別と反原発

4月3日に京都で行われた反原発のデモ、なんとか行ってきました。
様子については、京都新聞の記事や、
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20110403000112

主催した方のすぐれた感想文が、こちらで読めますので、是非読んで下さい。
デモを終えて(ピースウォーク京都)http://pwkyoto.com/


終息のめどがまったくたたない放射能災害についても、それから前回の記事に書いた宮城の朝鮮学校への補助金打ち切りというニュースを見ても、あらためて思うのは、この社会でこれまで差別に苦しんできた人たちは、今回の天災・人災の到来によって、差別の状況が改善されないばかりか、それがいっそうひどくされて固定化・正当化される状態に置かれつつあるという現実のひどさだ。
在日朝鮮人のことに限って言っても、これまでずっと差別に苦しみながら、それでも自分が暮らす地域には愛着を持ってきた、持たざるを得なかったはずである。
それは、こういうニュースを読むと、なおいっそう実感される。


朝鮮学校も避難所に(沖縄タイムズ)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-04-04_16293/


だが、「非常時」とか「復興」ということを理由にして、「民族」や「国籍」を理由にした日本側による排除・差別は公然化されていく。
そして、差別はまるでなくならないのに、それでもその土地への人間的な愛着を棄てることなく生活してきた人たちの上に、放射能の恐怖だけは「平等」に降り注ぐのだ。
本当に、なんという酷い国だ、と思う。


これは今、あらゆる少数者(外国人、障害者、病者、地方の人、野宿者、子ども、女性、性的少数者、不安定就労の人など)の状況に共通して言えることだろう。
災害によって、社会の少数者たちは、ただちに困難な状況に置かれるが、そのことはそれまでの社会が有してきた差別性の現われでもある。
なのに、災害による被災の大きさを理由にして、この人たちが置かれてきた被差別的な状態、社会の差別的なあり方の改善という課題は後回しに、いや存在を認めるべきでないもののようにされ、被差別者は被差別的な位置に留め置かれる。そして、むき出しになったその劣悪な場所に、差別の暴力や放射能の恐怖のようなものが、冷酷に降り注ぐのだ。


そして日本では、原発の存在というものが、そもそもこの差別の構造の上に成立してきたものである。
現在の社会を成立させるための負担を、力の弱い特定の人たちや土地に押し付け、そのことによって得られる生活のあり方を自明のもののように享受した上で、この弱者(犠牲者)たちの声を抑圧し、存在を無視する。
まさに、そうした今までのぼくらの生活の姿勢の結果が、現在の放射能災害なのだ。
そして、その被害が、今や最も弱い立場の人たち、少数者や、子ども、乳幼児、未生の世代に、もっとも深刻に降り注ぐ。
こんな理不尽が、あっていいのかと思う。


同時に言えるのは、こうした差別の構造の容認は、ぼくたち自身が、自分の置かれた状況、感じてきた怒りや不満や恐怖に関して、正当な形での抗議の声を上げてこなかったこととつながっている、ということだ。
自分や自分の周りの人間が受けている、迫害や侮蔑に対して、それを加えてくる強い力に向かって、体を張って抗議し立ち向かうことを回避してきたこと。
それが、この理不尽な状況の容認、誰かが差別され苦しみ続ける社会のあり方の黙認という結果を生み出している。
いま、原発の恐怖や不安に対して、堂々とNOを言うことは、その状態の打破につながるものだと思うし、そうしていかなくてはいけない。


日本の反原発運動や、それ以前からの反核運動には、左翼の内部でも、さまざまな批判があることは、少しは知っている。
だが、運動のもっとも底にある部分、論理や組織性で捉えきれない一番底の感情の部分においては、それはあらゆる差別を行動と議論のなかで打破していく、普遍的な人間的な力に根ざすものだったはずだ。
そういう、人々の抗議の歴史の、一番基本的な部分を継承しながら、差別的な社会の撤廃につながるものとしての反原発運動をすすめていく力が、今のぼくたちにはあるはずだ。


原発の問題がすべてではない。
日常のなかで、いかに「差別に敵対する自分」を解放していくかということに、本当は全てがかかっているのだろう。
だが、今まさに、自分のみならず、社会の少数者(被差別者)に関わる緊急の問題として、ぼくらの目の前にあるのは、この原発のことだ。
他者を差別しない社会の実現のために、今こそぼくら自身の声をあげよう。




地域別「脱(反)原発デモ&イベント」情報
http://d.hatena.ne.jp/tea_67/


STOP原発!アクションin関西
http://www.geocities.jp/stopnuclearkansai/