ETV特集 日本と朝鮮半島2000年・第4回

日本と朝鮮半島との関わりを、古代から明治初めまでにかけて、大きなスパンで捉えなおそうというシリーズの第4回。
以前から人に勧められていたのだが、今回はじめて見た。
非常に興味深い番組に作られていたと思う。
大桃美代子の韓国語が上手なのにもびっくり。


今回は、いわゆる大化の改新から白村江の戦いを経て、「日本」という国号がはじめて用いられるあたりまでが描かれていた。
中国に唐という強大な国家が出現したことにより、東アジア全体に大きな政治的変動が起きる。そのなかに、「日本」という国家の出現にもつながる、朝鮮半島と日本列島の動きを位置づけようということである。
朝鮮半島はじかに唐の出現の影響を受けて国が興亡し、日本も大化の改新を始まりとして政治的な変動が起こり、蝦夷や隼人を服属させたり、白村江の戦いを通じて百済を服属させることを狙ったり、本格的に強国化・中央集権化の道を進む過程が説明される。
いわば、国家の誕生である。


まあ、自分の国も大きくしなければ大国に飲み込まれるから、というのは国家の論理としては分からないでもないが、それで現実に泣くことになる他人(や身内)が出るわけだから、その国家の論理に同一化して強国化や国家の拡大を自明のことのように考えてしまうというのは、やはり情けないことだと思う。
国家単位では、何千年経っても同じ事を繰り返してるわけだが、それに対する人間の反省は、とくにこの国ではあまり進歩していないようだ。


ところでこの大化の改新だが、今は乙巳の変(いっしのへん)と呼ぶのだそうである。
百済との結びつきが深かった蘇我入鹿が、中大兄皇子らにより、天皇や、三韓といって百済高句麗新羅の代表団の前でいきなり殺されたという説が紹介されていて、生々しかった。
また、唐や新羅に圧迫され、やがては滅亡する百済からは、多くの人が亡命してきて、(唐・新羅の侵攻に対抗するための)城郭の建設など軍事的・文化的に多大な影響を倭国・日本に与えることになる。


国や王朝が滅んだり危機に陥って、人々が日本に亡命してきて影響を与える、というようなことは歴史上何度も繰り返されてきたであろう。
そうやって歴史や文化が作られていくともいえる。ある意味では、「日本」もそのようにして生まれたのだ。
しかし、百済の人たちの立場に立つと、もちろん倭国の人の中には、個人レベルでは善意や宗教的心情、義侠心といったものから手厚くしてくれる人もあったであろうが、国家レベルで見ると、日本(倭国)への協力は結局自分の国が「防波堤」として属国化されることにつながるという認識はあっただろうから、日本での活動には複雑な思いがあったことだろう。
このへんも、時代が変わっても、あまり変わらない部分であろう。


それから、大化の改新の後に、孝徳天皇がアジアとの関係の強化を狙って、飛鳥から難波津に遷都したというのは、今でいうと橋下知事道州制を睨んで府庁舎をWTC跡に移そうというのと同じ発想に思え、やはり地理的条件は昔も今も同じなので、時代の変わり目に当たって打つ手というのは、限られてくるのだろう(「中央集権」と「地方分権」と、概念のうえでは一見逆のように見えるが。)。


それから、これは人にいわれて気がついたこと。
出演していた韓国の歴史家が新羅の存在の大きさを強調していたのが、ナショナリズムのような気がしてあまりよく思えなかったが、同時に百済高句麗滅亡後の新羅は、それ以前の新羅とは、さまざまな人たちの流入によって別様の国家に変わっていく、ということも言われていた。
これは、南北の統一ということだけでなく、外国人労働者問題など、現在の韓国社会と言説の変容に伴う、新しい国家観、歴史観が、韓国の学者たちによって模索されてるということを示してるのかも知れない。


一方で、NHKの最近のこうした番組自体が、日本の新しい国家的なプロジェクトの一環という性格も持っていると思う。