乗り越えられたもの

オバマが大統領選に勝ってからの論調で、どうも気になることがあるので、いわずもがなのことだと思うが、書いておきたい。


有権者は人種の壁を乗り越えた』ということを、本人も日米のマスコミも言っている。
これだけを読むと、「乗り越えられた者」が誰なのか、また「人種の壁」にこれまでこだわってきたのが誰なのかが曖昧である。
人種の壁を作り、それに過剰に拘ってきたのは、権力を握ってきたWASPの連中に決まっているではないか。その煽りをくらって、「人種」にこだわらざるを得ないほど苦しい立場におかれてきた、アフリカ系に限らずマイノリティの人たちに、これを「乗り越える」主たる責任があったわけではない。


要するに、ここで乗り越えられたものは、「人種」ではなく、「人種で人を差別していた壁」なのだ。
このような差別の枠組みを作りだし、当たり前のようにそれを行ってきた連中の愚かさが、乗り越えられたということ以外ではない。
この点を曖昧にしたい連中が、日本でもアメリカでも、いまなお権力の中枢を握っているということである。