よく見る姑息な解説

竹島問題をめぐる韓国政府の強硬な態度が報じられているが、よく報道の論調で見かけるのは、「李明博政権は、支持率も低いし窮状に陥ってるので、こうした対日強硬策に出ざるをえないのだ」といった事情説明。


つまり、韓国政府としては、本当はこうした強硬策をとるべき問題だと思ってるわけじゃないけど(小さな問題であるか、もしくは日本側に非はないと認めてるのだが)、世論が「反日」で盛り上がってるのでやむをえず強い姿勢に出てるだけである、という含意である。
いずれにせよ、そんなたいした問題ではないし、日本のわれわれにとっては、何も反省したり考え直したりする要素はないということを、読者に思わせたいのだろう。
これはもちろん、事実の一面しか(あえて)捉えていない論調である。
そもそも、言論や行動によって一般の人たちが政府に圧力をかけて、ある政策や対応をとらせているのであれば、それをその国の意思と見なすのが、民主主義国家に対する見方の基本だろう。


竹島問題自体がというより、この問題で火がつくような日本への不信、不安の感情が、多くの韓国の人たちのなかにあるということは、決して軽視してよいことではないし、もちろん「反日教育」などに原因を求められるものでもない。
戦後の日本がこれまでに示してきた国としての姿勢、そしていま現在向かいつつある方向、そういうものが、かつて植民地支配を受けた隣国の民衆の目から見て、どう見えるか。これが根本である。
韓国の民衆の猛烈な反対を押し切って軍事独裁政権と結んだ日韓条約だけで過去の問題を済んだことにし、植民地支配についての明確な謝罪の言葉も無く、強制連行や強制労働に従事した人たちの補償はおろか、遺骨の調査・返還もまるで行わず、「慰安婦」問題等については国の責任をいまだに一切認めず、「在日同胞」には地方参政権も認めず、そのあげくに憲法を改正して「戦争の出来る国」になろうとしていて、六カ国協議のような場では自分の国の言い分しか言えない。これで「信頼しろ」という方が、本当は無理な要求だ。


そういう根本的なものがあるから、時に韓国政府自身もコントロールできないほどに、「反日」的な世論が力を得るのである。
韓国政府がどういう態度を示してるかということや、デモの拡大を心配するような表面的な懸念ではなくて、何かのきっかけがあると、なぜ政府自体も抑えられないほどに人々の疑念や怒りが、日本のやり方に対して爆発してしまうのか、その根本を考えるべきである。
現政権の「お家の事情」みたいなことを持ち出して、いかにも韓国の人たちの日本(政府)に対する不信や不安が表面的で周縁的な(「反日」をすりこまれたとか、扇動された不満のはけ口といった)感情であり、われわれがそこから受け取るべきメッセージが無いかのような報じ方をするのは、両国の人々の間の距離をいつまでも疎遠にしておくことに寄与するだけだ。


ただまあ、こういう人たちを見ると、韓国でも右翼はやっぱり怖いとは思うが。
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/080717/kor0807172227009-n1.htm