怒るべきこと

やはり橋下知事関連で話題になってることなので、この件についても少し意見を書いておこう。


橋下知事が生放送でNHK“口撃”
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/080209/lcl0802090016001-n1.htm



橋下知事が「キレた」ということばかりが話題になってるけど、一番の問題は番組内の出来事じゃなくて、事前の番組宣伝でNHKが「新知事と市長が生出演」と何度も繰り返して流してたことだと思う。
橋下の番組中での発言を信じるなら、NHKは少なくとも橋下が途中からしか出演できないことが分かってたはずで、それならあの宣伝の仕方には問題がある。
「偽装」(虚偽)とは言わないまでも、誇大広告にはあたると思う。法や規制には触れなくとも、視聴者(多くは大阪府の住民でもある)をだましたと言ってよい*1
要するに、NHKは「橋下人気」にあやかって(俗に言う)「視聴率をとろうとした」のだろう。


問題は、橋下のような人を、そういう「商品」として扱うマスコミの態度である。橋下自身が、そのようにタレントとして扱われることを利用して政治家になり、政策を有利に進めようとしてもいるわけだろうから、お互い様ではあるが、報道する側にこうした「政治の商品化」に歯止めをかける姿勢がなければ、住民の命や生活に関わるような重要な政治的決定が、テレビや市場の論理に大きく左右されてしまう現状は改善されない。
「政治家だから、丁寧に扱え」ということではなく、われわれの命にも関わる事柄だからこそ、政治報道を安易に商品化されては困るのである。
これは無論、橋下を無定見にもちあげたり、世論の風向きが変わったときのために「本気でコミットしてるわけじゃありませんよ」と言わんばかりのどこか皮肉まじりの曖昧な表現で保険をかけながら追従的な報道をしている、民放や他の多くのマスコミも同罪である。
こういう態度が、橋下のような人が知事に選ばれることに大きな役割を果たしたのだ(もちろん、マスコミだけが悪いわけじゃないけど。)。
われわれの命に責任をもつべき政治家を、商品のようにのみ扱うマスコミ(したがって、世論に評判の良さそうな政治家を決して批判しない)は、われわれの存在をも商品のようにしか見なしていないということであり、それに対して怒るべきなのは、むしろわれわれの側である。
「橋下VSマスコミ(NHK)」などはどうでもよく、それらによって作り出される安直な政治や社会のあり方に対して「ノー」を突きつけるかどうかの当事者は、われわれ以外の者ではないのだ。

*1:一ミーハー視聴者であるぼくは、オープニングで橋下知事がいないのを見て、NHKにだまされたような不快な気分になった。