医療と介護(題名不明)

母の調子がよくなくて、夕食の時間も普段より遅くなった。その食事するのを手伝いながら、横目で「クローズアップ現代」を見る。
介護施設の現場の深刻な状況がとりあげられていた。いわゆる「医療制度改革」の影響で、治療の必要があるのに病院に入院できない老人が増え、その人たちが介護施設に入所してくるようになったため、医療の専門家の少ない介護施設では対応できず、混乱が広がっているという実態。
ある施設では、夜勤の看護士の人がひとりしかおらず、多いときは一晩に100回近くもあるというナースコールに、その人ひとりで対応しなければならないという極限的な勤務。しかも、対応をひとつ間違えば命に関わりかねない仕事である。その疲労やプレッシャーははかり知れない。
どこでも、ああいう状況なんだろうなあ。というより、そもそもこうした介護施設では看護士のような医療の専門職を置くことは法律で義務付けられておらず、映ってた施設は任意で雇ってるだけ、ということらしい。つまり、いま生命の危険にさらされてるお年寄りも、現実に各地の施設にはいるということか。


介護の現場の問題、それは制度、経営、労働条件、考えなくてはいけない、変えたり建て直したりしないとどうしようもないことがいくつもあるのだろうが、それと同時に、不可分にからみあって医療のことというのがある。この二つが、ひとつながりになって制度の改変がすすめられ、その結果、問題がひろがってる。
医療の場では、基本的に、病院に長期間入院させないシステムになってきているということ。この人たちの行き場は、こうした不十分な医療設備しかない施設か、そうでなければ家庭ということになる。番組に出てた専門家(この人は、改革推進派のようだけど)の話だと、前者を改善することはあまり考えられてないようで、各家庭で何とかせよということのようだ。
この専門家は、「改革で病院に居られなくなった患者の7割は在宅での対応が可能」と言うけど、減少する見込みのない労働時間のこととか、いろいろあり、数字上は可能にみえても、実際はたいへんな家はたくさんあると思う。またそれをフォローするような体制を整えることが肝要といっても、それが容易に出来ないからコムスンの問題とかも起きてると思うんだけど。
この専門家の人のいろいろ言ってることが、心に伝わってこない。
「ここで介護施設に医療職を増やしたら、なんのために医療制度改革をやったのか分からなくなる」いうけど、立案者のメンツや意地じゃなくて、患者の命を中心に考えられないものか。


「この方法がいいと思って(改革を)やってみたけど、どうもうまくいかないようなので考え直します」と、なぜ素直に言えないのか。
とにかく、釈然としない番組だった。


入院期間の話だが、春に母が入院してたとき、なるべく早く退院させようとしているという感じは受けた。
そのときは、入ってたのが救急病棟だったので、たしかに他の人のためにもなるべく早くベッドを空ける必要があるんだろうと思ったが、かわりの入院先も紹介してくれなかったし、医師や看護士さん自身が、ベッドを空けなければという観念にせきたてられてるみたいな雰囲気を感じて、どうしてだろうと思ってた。
背景に、制度の「改革」ということも、やはりあったのだろう。


そう言えば、よくテレビで、高齢になっても入れる生命保険の宣伝をしてて、高額の入院給付がつくことが売り物だったりするけど、実際入院できる期間というのが、そういう事情で前より短くなってる(末期がんの患者などでも、最近は「在宅」に回されるようになってきてるという「アエラ」の記事のことは、前に書いた。)のだから、保険会社は腹が痛まないようになってるんだよなあ、とも思う。


たしかに、生きるのも死ぬのもなんでも病院に頼ればいいという考え方は、それはそれで暗くて嫌だけど、人が人に安心を与えるにはどうするか、といったことを土台にして考えるようでないと、またその「土台」を現場で働いてる人たちが忘れないでいられるような環境が整備されないと、結局は誰もが辛い。
納得のいかない理由で押し込められたり、逆に放り出されたり、放置されたり、それが当たり前で文句の言えないこと、みたいになってはいけない。
まして、命に関わることなんだから。