菊花賞回顧

ディープインパクトは勝つには勝ったが、ライバルたちの前で大きな弱点を露呈した。ライバルというのは、具体的にいうと、次にディープインパクトが出走を予定しているとされるジャパンカップ有馬記念で、ゼンノロブロイへの騎乗が想定される横山典弘であり、同じくタップダンスシチーに乗るであろう佐藤哲三であり、また彼らをはじめとした騎手や他厩舎の関係者たちである。
その佐藤が騎乗したシャドウゲイトがハナを切る展開のなかで、はじめの4コーナーからスタンド前にかけてのディープの掛かり方は、あれはひとつ間違えれば負けにつながるものだ。テレビで解説をしていた岡部も言ってたが、あそこをどうにか武豊が抑えきれたことが、今回の勝利の決定的なポイントだろう。
タップダンスシチーで間違いなく大逃げを打つだろう佐藤には、ディープを前半でつぶしてしまう戦略が見えたはずだ。その好位につけてゼンノロブロイで進出の機をうかがうだろう横山は、アドマイヤジャパンで一泡ふかせかけた今回以上の周到な騎乗で必勝を期すだろう。
とりわけ、中山競馬場を舞台とする有馬記念にディープが歩を進めるとすれば、上記三頭(ディープ、ロブロイ、タップ)の対決は、これだけでも必見である。ディープインパクトにとっては、あのコースは甘くない。


武豊は、ディープインパクトで三冠を達成できて本当にほっとしただろうと思う。レース前、この馬を勝たせてやりたい、とあれほど言っていたわけだし。
レース前半のあの掛かり方は、彼以外の騎手だったら、抑えられたかどうか。ほんとうに、負けていておかしくないレースだった。
最後の4コーナーに向って、京都名物の坂をカーブしながら駆け下っていくとき、テレビ画面のなかのディープインパクトに、「ユタカを勝たせてやってくれ!」と叫んだ。今回はぼくは、ディープの方に感謝したい。
想像を越えるようなプレッシャーと武豊は戦っていたと思うし、今後もこの馬が引退するまでは戦い続けることになるだろう。


ディープインパクトは、やはりぼくが見てきたなかで最強の馬である。