柳ヶ瀬ブルース

66年に発表された美川憲一による大ヒット曲。
もちろん子どもの頃からこの曲を知っていたが、ぼくが人前で機会があるとこの曲を歌うようになったきっかけは、数年前に韓国のある山深い場所で、日本で長く暮らしていたことのある韓国人のおばあさんと二人で日本のテレビ番組の録画を見ていたとき、この曲が流れたことである。
そのときに歌っていたのは、美川憲一ではなく、この歌の作者である宇佐英雄という人だった。


さっきネットで探したら、この歌の誕生秘話が、このように書いてあった。
もともとは「長岡ブルース」だったのか・・。
あのときに見ていたテレビ番組でも、そんなストーリーが流れてたのかもしれないが、番組の内容も、宇佐英雄の歌い方がどんなものだったかもまるで覚えていない。
また、なんといってもこの歌は、美川憲一のあの詠唱と切り離しては、決して考えられないだろう。


ただ、どうもあの時に、この歌がぼくの中に入ってしまったみたいな気がする。
それ以来、行った先々で、ぼくの喉と身体を通して、この歌がその土地の大地と空気に流れ込んでいこうとするらしい。だから、ぼくがこの歌を歌うのは、ぼくの意志ではなく、この歌自身の意志なんだと思う。


パブロ・カザルスは、バッハの無伴奏チェロ組曲を、老年になるまで数十年間毎日欠かさず弾いて練習し続けたそうだ。
なぜそんなことをするのかと、ずっと不思議だったけど、あれもカザルスがこの曲を選んだというわけではなく、曲によってカザルスが選ばれてしまったということだったのではないか。


そういうわけで、ぼくもこの曲を、これからも色んな土地で、ずっと歌っていくつもりである。