テレビや本のことなど

夜、テレビで渥美二郎が春日八郎の「別れの一本杉」を歌ってるのをちらっと聞いたけど、思い違いでなければ、とんでもなくうまかった気がする。ぼくは、ああいうのを「うまい」と感じるんだよねえ(説明になってない)。
最近ではもう一人、『ミリオンダラー・ベイビー』でのモーガン・フリーマンの演技に、本当に感心した。これもさっきテレビを見てたら、彼のインタビューが流れてたけど、「自分は台詞を覚える以外は、特別な役作りをしないタイプである」というようなことを言っていた。自分が演じる人間がどういう人物かは、台本に書いてあるからだそうだ。どんな役作りをしてるんだろうと思ってたので、これは意外な言葉だった。でもこれが本当だとすると、やっぱりすごい人なんだろうなあ。
また、自分が演じるのは、どこに旅しても出会うことが出来る人間だ、みたいなことも言ってた。


ところで、月曜日は書店で本を二冊買った。高橋哲哉の『靖国問題』と、永江朗の『<不良>のための文章術』である。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480062327/249-4752928-7500355

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140910054/249-4752928-7500355


永江という人は、ある人が「今一番注目している書き手」というふうに言ってたので、読んでみようと思った。実は、前からちょっと関心はあったのだが、これまで機会がなかった。プロフィールを見ると、北海道旭川市の出身と書いてあった。ぼくより四つほど年上らしい。年下でなくて、ほっとした。
高橋氏の本は、実は買うつもりはなかったのだが、店頭でページをめくってみたところ、読みやすく面白そうだったので衝動的に買った。本も馬券と同じで、時には自分なりの「筋」を外して買った方がよい。あんまり高い本だとできないが。「筋」というのは、これの次はこれを読む、というような自分のなかで出来上がってる順番みたいなもののことだ。
靖国問題』で目に付いたのは、文中の強調したい(んだと思われる)部分の活字が太文字で印刷されていることだ。ブログなどインターネットではよく見る手法だが、こういう新書みたいな堅い本ではあまり見ない。僕自身はあまりやりたくない方法だが、それだけこの本を今多くの人(特にこうした本をあまり読まない人たち)に読んでもらいたいという、著者なり編集者なりの意欲が感じられる気がした。
そうすることで実際に読みやすくなるかどうかよりも、そういう姿勢を読者に対して目に見える形で示すことで、読む方は自分が受け入れられているように感じ、「買ってみようかな」という気になるものである。いまこの本がよく読まれているというのは、そういう工夫の成果もあるのではないか。
というか、ぼくも他人事じゃないよな。


経済的な事情で、この二冊しか買えなかったが、もちろん読んでみたい本は、他にたくさんある。そのことを少し書こう。


最近気になってるのは、岩波文庫の復刻(?)で面白い本がいくつか出てることだ。ひとつは、チェーホフルポルタージュサハリン島』上下巻である。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003262271/249-4752928-7500355


これは、ロシアの大作家チェーホフが、ロシア帝国流刑地とされていたサハリンを旅した記録で、雑誌に連載されていた当時、ヨーロッパ中で評判になったものらしい。カフカの有名な短編「流刑地にて」は、このルポルタージュの影響を受けて書かれたといわれている。
ぼくもちょっとページをめくってみたが、ロシアの流刑制度のことだけでなく、当時のサハリンの事情や、ロシアの植民地政策について、広範なことを知ることができるようだ。そうした方面に関心のある方にはお勧めだ。
何より驚かされたのは、この比較的マイナーな本が、すでに1953年に岩波文庫から出版されているということだ。時はまさに高史明さんの『闇を喰む』の時代である。当時は、ロシア文学というと、若者にずいぶん人気があったんだろう。また、こうした社会問題をテーマにしたルポというのも、ロシア文学好きには特に受けたんじゃないかと思う。
それにしても地味な本だけど。


もうひとつは、E・H・ノーマンの歴史随想集『クリオの顔』。これは、一度絶版になってたものらしい。
ノーマンというのはカナダの外交官であり、日本史の研究者として著名な人だったが、「赤狩り」で圧迫を受け、最後は赴任先のカイロで自殺したらしい。ぼくは竹内好の『日本とアジア』を読んだときに、名前を始めて知った(ぼくは、やっぱりこの時代に関心があるんだよなあ)。
アマゾンでこういうのも出てきたが、こっちも今読めるのかな?

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003343727/249-4752928-7500355


ノーマンについては、こういう本も出てるそうだ。

http://dewanokuni.hp.infoseek.co.jp/norman.htm


いずれ読んで、よく知ってみたい著者の一人である。


そんなつもりはなかったのに、本の宣伝特集みたいになってしまった。
しかも、まだ読んでない本ばっかりだ。