光州の思い出

同じハテナの、『三色スミレの成長日記』さんで詳しく紹介されているが、ぼくも『サマリア』という韓国映画を見たいと思っている。

http://d.hatena.ne.jp/tatar/20050408#1112952072


この映画は、東京ではそろそろ公開が終わる頃ではないかと思うが、大阪では今月中ごろから公開されるらしい。
また、今月の終わりごろからは、アカデミー賞をとったイーストウッドの新しい映画も上映が始まるようだ。こちらも、是非見てみたい。
さきにこっちの話を書いておくと、イーストウッドは非常に好きな監督だが、そんなにたくさん作品を見ているわけではない。主にヨーロッパで評価されだした頃の、監督になって初期の作品はどれも見ていないはずだ。
その数少ない見た映画のなかで言うと、ケビン・コスナー主演の『パーフェクト・ワールド』は素晴らしかった。あれは、主人公の少年がある実在の新興宗教を信仰する家庭の子どもという設定で、それが理由になっていじめられたりしていて、その少年と脱獄した死刑囚の男との交流を扱った映画だった。
今までに見たすべての映画のなかで、一番好きなもののひとつだ。


韓国映画の話に戻る。
最近見た韓国映画のなかでは、以前に書いたように殺人の追憶』が一番よかった。
これまでに見た韓国映画すべてのなかでベスト3を選べば、『ペパーミント・キャンディー』、『JSA』、それに『つぼみ』である。ただし、これは作品としては、ということで、6-70年代の韓国映画で雰囲気的に捨てがたいものがあるような気がする。個々の作品としてのクオリティーがすべてではないと思う。
ところで、上記のうち『ペパーミント・・』と『つぼみ』には、いずれも光州事件が出てくる。光州事件勃発の日は、1980年の5月18日ということになっている。もうすぐ25周年というわけだ。
前にも少し書いたが、20年目であった5年前の5月18日前後、この地で行われたある国際会議にもぐりこんで、光州を訪れた。会議は聞いているだけで、夜の交流で酒を飲んで喋ったり、事件当時を再現した大規模なイベントに参加してもみくちゃになったり、新緑のなかを友だちと華厳寺という有名な山寺まで散歩したり、光州ビエンナーレを見に行ったり、魚料理を食べに行ったがメニューが読めずフジツボみたいなものを出されて往生したりした。


光州事件の犠牲者の墓は、いまは大きな国立墓地になっており、ぼくたちが行った次の日に、当時の金大中大統領が訪れたそうだ。


光州は、韓国有数の大都市で、人口はかなり多いはずだが、高い建物がなく、感じとしては和歌山市をだだっぴろくしたような町である(和歌山を知ってる人しかわからない説明)。
智異山(チリサン)と総称される山が近傍にあり、ここは歴史的に色々な出来事があった山なのだが、いまは登山に来る人が多いことでも知られている。登山といっても、トレッキングのようなことだろうが、相当本格的な装備で登る人が多いようだ。韓国の軍隊は、この山のなかで特別な訓練をするのだと聞いた。
山のなかの川で取れる魚の料理が、名物として有名であるらしく、車で町を走っていても店先に魚のいる水槽が置いてある店をよく見かけた。
光州は、全羅南道と呼ばれている、韓国の南西部の地方の中心をなす町で、ソウルから電車で全羅道に入ってくると、植生が変わるのが分かり、五月だと、光と緑の感じが変化するのもはっきり感じられた。そういう点でも、大阪から電車などで紀州紀伊半島に入るときの感じに似ている。
全羅道紀州も同じく半島であり、自然だけでなく、風土・歴史の面でも似ているところがあるかもしれない。といっても、和歌山のことも、中上健次の小説ぐらいのイメージしかないが。


あれからもう5年経つのか。
もう2年近く、韓国には行っていない。以前は、年に5、6回行っていた。行けば必ず、何かが楽しかった。
どうして行かなくなったのかというと、ひとつには日本から出るのが億劫になったという言い方もできる。精神的には、韓国語を使わなくなったこととも重なっているように思う。
一口に言うと、「保守化」したということか。日本社会が保守化したのと一緒に、あの頃から比べると、ぼくも保守化したのかもしれない。


華厳寺に行く途中で見た、樹や草の緑がなつかしい。