『一九八四年』

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

どうしても立ち直ることのできない出来事、自分のやった行動というものがある。何かが胸の内で葬られる、燃え尽き、何も感じなくなるのだ。(p452)

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再掲・『フランドン農学校の豚』

かなり前の記事ですが、最近またこのお話のことを思い出しました。


http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20051110/p1

「いやですいやです。」豚は泣く。

「嫌だ?おい。あんまり勝手を云ふんじゃない。その身体は全体みんな、学校のお陰で出来たんだ。これからだって毎日麦のふすま二升亜麻仁二合と玉蜀黍の、粉五合づつやるんだぞ、さあいい加減に判をつけ、さあつかないか。」

なるほどこう怒り出して見ると、校長なんといふものは、実際恐いものなんだ。

怒りのエコノミー

書きあぐねている人のための小説入門

書きあぐねている人のための小説入門


保坂和志は、現役作家中もっとも好きな作家で、この本もたいへんいい本だと思うが、次のところには違和感を持つ。

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ベックのカフカ批判

きのうの記事のなかで、エヴリン・T・ベックという有名なカフカ研究者のインタビューが、粉川哲夫著『カフカと情報化社会』という本に収められていることに触れた。

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カフカ賞とイスラエル問題

村上春樹エルサレム賞受賞(受諾)とその講演のことが話題になっている*1けれども、国際的な文学賞の舞台にこの作家がはじめて登場したのは、06年のフランツ・カフカ賞だろう*2

*1:村上さんの講演には、ぼくも感動を覚えた。

*2:ちなみに、前年の受賞者は、ハロルド・ピンター

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「ハイファに戻って」

ハイファに戻って/太陽の男たち

ハイファに戻って/太陽の男たち


この作品集を通読して、ひとつとても印象に残ることがある。
それは、「あなた」や「君」という二人称が多用されていることである。これは、叙述そのものが二人称になっている場合もあるし、作品のなかでこうした「語りかけ」が重要な意味を持っている場合もある。
ともかく、二人称による「語りかけ」の効果が、いくつかの作品を通して印象的なのである。

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