『マイケル・K』

マイケル・K (岩波文庫)

マイケル・K (岩波文庫)

この小説は、南アフリカ共和国出身のノーベル賞作家、クッツェーの代表作の一つと言われているものだそうである。
とっつきにくいところがあるかもしれないが、とにかく読んでみることをお勧めする。
僕は、主人公が自分にとってどこか身近に感じられる人物だというだけではなく、現在の世界(この作品が書かれたのは80年代前半らしいが)、とくに今の日本社会を象徴的に描いたかのような小説だと感じ、非常にひきこまれて読んだ。

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『大逆事件 死と生の群像』

きわめて重要な著作。いまの日本を生きるうえで是非とも読むべき本をあげろと言われたら、僕はノーマ・フィールドの『天皇の逝く国で』と並んで、この書物を推す。

大逆事件――死と生の群像

大逆事件――死と生の群像

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『エミール』第五編

エミール〈下〉 (岩波文庫青 622-3 )

エミール〈下〉 (岩波文庫青 622-3 )

女性は、気に入られるように、また、征服されるように生まれついているとするなら、男性にいどむようなことはしないで、男性に快く思われる者にならなければならない。(今野一雄訳 岩波文庫版下巻 p7)

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『高江ー森が泣いている2』

25日日曜日は、十三のシアターセブンで映画『高江ー森が泣いている2』の上映、終了後に影山あさ子監督によるトークと、同作でも音楽を担当しているきむきがんさんのライブも聞いてきました。
映画は、9月から11月にかけての高江の情勢を追ったもので、山城博治さんが、工事をすすめようとする防衛局員たちに、自分の闘いの原点である高校生時代の体験を語る場面から始まっています。
もっとも印象的だったのは、タイトルにも象徴されているとおり、高江の木々が伐採され、重機で引き抜かれていくのを、人々が懸命に抗い、そして見つめている場面。その映像に、その時の心情を歌ったきがんさんの歌声が重ねられます。
抵抗を続けるある人は、「僕らにも意地があるじゃないですか。ここに確かに森があったんだぞという」という風に語ります。
この場面を撮影したことについて、影山さんたちは、抗議行動をしていた人から「あの木々が生きてきたのだということの、証明を記録に残してくれた。ありがとう」と言われたそうです。
映画の最初の方で、宮城秋乃さんが、一本の樹木にどれだけ多くの動植物の営みが蓄積されているかを説明して、「木を見て森を見ずというけど、見る人が見れば、一本の木の中に森のすべてが含まれているんです」というようなことを言います。僕はそれを聞いていて、一人の人間と社会の関係も、それと同じようなものだと思いました。
その根を引き抜き、土台を掘り崩すように、基地建設と戦争国家化は進められている。


影山さんのトークで印象的だったのは、「私たちは、奄美から与那国にかけての大規模な軍事化という現実の、まだ始まりを見ているにすぎない。これからずっと、この現実と向き合うことになる」という言葉。恐ろしいことですが、正しい認識だと思います。
きがんさんも、歌の合間にいろいろ話されたのですが、特に、現場で作業をしている労働者のおっちゃんたちが、この仕事に就けなければ明日の仕事にもあぶれるような普通の沖縄の庶民の人たちであるということ、そして10代半ばぐらいの若者も現場で働いている。抵抗のさなかでの、その人たちとの交流と言葉のやりとりの話が心に残りました。

映画は、大阪シアターセブンでは1月13日まで、ポレポレ東中野(東京)は、12月28日まで、沖縄・桜坂劇場は1月6日まで、それぞれ上映予定。また、名古屋シネマテークでは1月14日からの上映です。
また、異例ですが、情報普及のために、この作品の上映権付DVDを1万円で販売しているとのこと。ご希望の方は、下記までお申し込み、お問合せください。

http://america-banzai.blogspot.jp/2016/11/blog-post.html