Web評論誌『コーラ』16号

Web評論誌『コーラ』の新しい号が発行されました。
シリーズ「現代思想を再考する」に、今回も拙稿を掲載していただいてます。
非常識なまでに長い文章になってますが、興味のある方は、時間のあるときにでもお読みください。
なお、広坂朋信さんによる連載〈心霊現象の解釈学〉の3回目は、ヘーゲルの思想の、広松など日本の戦後思想にもつながるある側面に光を当てた、たいへん興味深い論考になっています。こちらは読みやすく、得られるものも多いと思います。


(以下転載)

 ■■■Web評論誌『コーラ』16号のご案内■■■

 ★サイトの表紙はこちらです(すぐクリック!)。
  http://sakura.canvas.ne.jp/spr/lunakb/index.html

 ●現代思想を再考する3
グラフスの微笑―― 宿命と偶然(記号と埋葬2)

  岡田有生
  http://sakura.canvas.ne.jp/spr/lunakb/gendaisisou-3.html
  前回の文章では、柄谷行人の論考「ライプニッツ症候群」を参照しながら、
 80年代以降の日本におけるいわゆる「現代思想」の重要な特徴を、ライプニ
 ッツ的な記号の論理の支配ということに見出そうとし、またその状況が同時代
 の世界的な思想の文脈においては構造主義的な思考の覇権という現象の一部と
 して位置づけられるのではないか、と考えたのだった。
 「ライプニッツ的な記号の論理の支配」ということを詳しく言うと、歴史性を
 消去された透明な項としての個物が、単一の全体の表出と考えられる諸記号
 (モナド)の体系のなかで関係しあう予定調和的な空間として、社会や事象を
 捉えるということである。
  そこでは記号は、たとえばデリダが語ったような「意味」の支配を惑乱する
 形式的な力として働くことはなく、逆に全体を表出する項であるかのように機
 能することで、その機能の場(市場、思考空間、公共空間)の同一性についての
 信憑を、言い換えれば、「全体」なるものが確固として存在しているというイ
 デオロギーを、密かに支え強化するものとして働く。(以下、Webに続く)

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  ●連載〈心霊現象の解釈学〉第3回●
   先端科学と超常現象

  広坂朋信
  http://sakura.canvas.ne.jp/spr/lunakb/sinrei-3.html
  もともとは心霊現象をめぐる思想史上のエピソードを面白おかしく紹介しよ
 うということで始めたコラムなのだが、初回は東日本大震災にうろたえ、二回
 目は旧友の死の衝撃から立ち直れずに、それらの言い訳から書きはじめること
 になってしまった。しかし、さすがに三回目の今回は私の怠慢以外の言い訳の
 種も尽きたので、いきなり本題に入る。
  前回、ヘーゲルが人相学や骨相学に鉄槌をくだす場面を紹介した。
  ヘーゲルは『精神現象学』で「人相学者の横っ面を張り倒せ、骨相学者の頭
 蓋を叩き割れ」と、当時流行したトンデモ科学を威勢よく罵倒していた。そし
 て、ある意味で彼の後継者ともいえるエンゲルスが磁気骨相学のトリックを暴
 き、交霊術に夢中になる自然科学者たちの無邪気さを冷笑するのも見た。エン
 ゲルスの言葉を繰り返そう。(以下、Webに続く)

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  ●連載:哥とクオリア/ペルソナと哥●
  第20章  水なき空のメタフィジィク・上句
       ──ラカン三体とパース十体(急ノ肆)

  中原紀生
  http://sakura.canvas.ne.jp/spr/lunakb/uta-20.html
  ちくま学芸文庫版『初期歌謡論』のあとがきで、著者は、この本を書くこと
 でいったい何をしたかったか、その二つののモチーフをみずから明かしていま
 す。
  ひとつは、「『記』『紀』の歌謡からはじまり『古今』の成立によって確か
 になった和歌形式の詩を、発生の起源から形式の成立まで、歌謡という統一的
 な概念でたどってみたかった」というもので、この課題については、第?章
 「和歌の発生」と第?章「歌謡の祖形」、そして第?章「和歌成立論」で論じ
 られます。
 「歌謡の発生の起源から和歌形式の成立までを、初期の歌謡として連続させな
 がら統一的に論ずるのが、わたしの願望だった。この方法は賀茂真淵と折口信
 夫に徴候を見つけだすことができる。この本の方法は両家にたくさんの恩恵を
 うけて、系譜の見方をすればこの系統をひいている。」
  もうひとつのモチーフは、「わが国の詩の理論の書とみることができる初期
 の歌論書を、もっと理論化してみたかった」というもの。具体的には、「平安
 期の歌論書が説いている歌体の類別を解剖することと、歌枕とか枕詞のように
 景観と地名とのあいだや事物と冠辞とのあいだの固定した言葉の慣習(いわゆ
 る「枕」)を解剖すること」の二点で、「かけねなしに難しい」これらの主題
 に著者は、第?章から第?章まで、「枕詞論・正続」および「歌体論・正続」
 の論述を通じて、「できるかぎりの力能」をもって肉薄します。
 (以下、Webに続く)

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  ●連載「新・玩物草紙」●
  水の地図/紅 茶

  寺田 操
http://sakura.canvas.ne.jp/spr/lunakb/singanbutusousi-6.html
  小説や詩で登場する知らない地名があれば地図で探すのはとても楽しい作業
 だ。近頃は主人公たちの生活範囲や足跡を辿れるような仕掛けも増えてきた。
 しかし、それらが現実の災厄に関わってくるとなれば、地図を見る楽しみはい
 きなり現実的な痛い扱いに変わる。
  春3月の東北大震災に続き、豪雨を道づれに秋台風がなんども列島を襲っ
 た。各地の河川を氾濫させた豪雨は、濁流や土砂が人々や家屋を呑みこみ、地
 形を大きく崩した。自宅周辺の地形が気になり、ハザード・マップを広げてみ
 ると、2方を山に抱かれた山麓のマンションは、土石流災害の危険地区なので
 愕然とした。(以下、Webに続く)