「“集団自決” 戦後64年の告白〜沖縄・渡嘉敷島〜」

こちらでも紹介されていた番組。
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090622/p1


これは、見ているのが苦しくなるようなすごい内容だった。
とくに最後の場面で、認知症が進行してぼんやりしている感じのお兄さんが、取材者が「今日は何日ですが」と日付を言うと、「慰霊の日ですね」*1と答えて戦争や国家に対する鋭い言葉を語りだす場面は、本当にびっくりした。
蟻の兵隊』という映画でも、意識がほとんどなくなってベッドに寝たきりの元上官が、主人公の呼びかけに答えて突然叫びはじめる場面があったけれども、人間はやはりああいうことがあるんだなあ、と思った。
http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20060807/p2
http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20060812/p2


ぼくがとくに印象深かったのは、島の人たちみんなが、国の教育によって「死なないわけにはいかない」、「生きているともっとひどい目にあう」という風に思い込まされていたということ。だから、集団自決という形で互いに殺め合うしかなかったのだが、その役目は、家族が絶対の責任を負うものとされた。
だから、自分の家族だけは、徹底的に息の根をとめた、という。


こういう心理になる状況というのは、もちろん到底想像できないが、ただ、「生き続けるわけにいかない」と思い込ませたものが国家であったということ、そして各自の命を奪う責任が最終的には家族にあると定められたということの二点は、強く心に残った。


それから、これは内容に関係ないが、中心的に描かれたご兄弟のうち、島で暮らしてきたお兄さんの発言には字幕が下に出るのに、若いときに島を離れて聖職についている弟さんの発言にはそれがないのが、ちょっと奇妙に思った。
方言(なまり)と標準語という違いに配慮したのかもしれないが、声の質や話し方などから、どちらかというと弟さんの言葉の方が聞き取りにくい印象を受けたからだ。
「字幕は不要」という考えもあるかもしれないが、少なくとも一方には字幕を付けているわけだから、同様に扱った方がよかったのではないか。

*1:渡嘉敷島の集団自決があった日か?