「枝川裁判」和解の件

もはや「旧聞に属する」という感じですが、下記の件につき、簡単にコメントしておきます。

http://www.asahi.com/national/update/0308/TKY200703080134.html

東京都などが、在日朝鮮人の子らが通う東京朝鮮第2初級学校(東京都江東区枝川、65人)を運営する「東京朝鮮学園」に対し、校庭として使用している都有地の明け渡しや都有地にかかっている校舎の一部撤去を求めた「枝川裁判」が8日、東京地裁阿部潤裁判長)で和解した。関係者によると、都と区が学園から和解金計1億7千万円を受け取り、10年間は土地の用途を学校用地に制限した上で、土地を学園に譲渡する内容という。


和解ということは、双方にいろいろな事情があったのだろうが、ひとまずよかった。
都としては、問題になっているのが「学校」だけに、こじらせて国連などの場で国際的な非難を浴びることを怖れた面があったのかもしれない。都知事選が近いことも多少影響してるのか?
萱野稔人は、『カネと暴力の系譜学』(河出書房新社)のなかでこう書いている。

日本の司法では、国家や大企業の責任を問うような裁判になればなるほど「和解」という判決がくだされる。なぜか。それは、判例によって国家や大企業の責任を法的に確定してしまわないようにするためだ。
 つまりここでは「解釈をしない」ということが、法によって国家の活動が縛られないようにするための手段となっているのである。法の意味をあいまいなままにとどめ、できるだけ国家に都合のいいようにそれを運用したいという意図がその背後にはある。(p92)


今回の場合は、「責任を問う」ということではないけど、今後同じようなケースで裁判になった場合のことを考えて、ここで行政側に不利な判例が示されることによる影響を考慮した結果だったのかも。
まあ解釈はどうあれ、学校の関係者や身近な人たちはひとまずほっとしてるだろう。
でも、和解金の一億七千万は、たぶん全国に寄付を呼びかけて集めるのだろうが、総連の現状では簡単に集められる金額ではないと思う。そのほうが心配だ。
まあ、ぼくももし要請があったらちょっとは協力します(たぶん)。


それから、この枝川の朝鮮初級学校ですが、5月に公開予定の井筒和幸監督の新作『パッチギ!2』には、この学校の現役の生徒たちがエキストラで出演するそうです。
井筒さんも、相変わらず頑張ってるなあ。