ジャズばかり聴いてた頃の思い出

「WON'T BE LONG」のカバー、女の方は誰が歌ってるのかと思ってたが、倖田來未やったんやなあ。
あれは滅茶苦茶上手いと思う。


blackpawさんのブログで「生まれてはじめてのコンサートは?」という質問があったので考えてみたのだが、ぼくの場合は、たしかライオネル・ハンプトンのビッグ・バンドだったのではないかと思う。


中学か高校の頃のことで、当時四国に住んでいたぼくは、大阪の親戚のところに泊まって中ノ島のホールかどこかで、このステージを見たのだと思う。
伯父の影響でジャズが好きであり、何度かこうして大阪に一人で出てきて、外国のミュージシャンのステージを見た。
もう少し後、といっても二十年以上は前のことだが、マイルス・デイビスが大阪に来て扇町公園のプールでコンサートをやったことがある。ぼくの記憶だと、三夜連続のステージだった気がする。今おもうと、なんであんなところでマイルスがやったのかと不思議だが、それも聴きに行った。


ジャズミュージシャンのステージというと、二十歳すぎのころ、東京に居たときは、有り金を全部投入するような感じでライブを聞きまくった。
印象に残ってるのは、当時再結成された山下洋輔トリオが都内のいくつものライブハウスでツアーのように連日演奏したとき、ぼくは十日間で十一回、それを聴きに行った。
最後の方は、山下さんたちもちょっと引いてたような気がする。
当時のメンバーは、ドラムは天才といわれた森山威男であり、サックスは坂田明に代わって林栄一という人が吹いていた。
この林さんという人のサックスもぼくは好きだったが、別の機会に前任者の坂田明の演奏を生で聴いたときは、文字通り震撼した。すさまじいアドリブを吹いてるのに汗ひとつ流さない。それまで聞いてきた他の日本のサックス奏者とは、まったくレベルがちがうと感じた。あんな強烈な印象を音楽の演奏から受けたことは、他にはない。
森山さんというのは、一部に強力なファンの人たちがいるとはいえ、当時からすでに「超マニアック」という感じの人で、ぼくが覚えてるのは西荻窪にある「アケタの店」という有名なライブハウスでこの人がリーダーのトリオのライブを聴きに行ったとき、観客の方もトリオぐらいの人数で、あまりの入りの悪さに二、三曲でライブが終了してしまったことがあった。
それは悲しかったが、そのとき目の前でブラッシュプレイをしていた森山のブラシの毛が、勢い余ってぼくの手元まで飛んできたときには、なんだか鬼気迫るような迫力を感じたものである。
すごいドラムだった。
肝心の山下さんのピアノというのは、完璧すぎたのか、あまり印象に残ってないのだが、山下、森山、坂田という全盛時代の山下トリオは、たいへんなメンバーだったんだなあ。


この頃は、ぼくは巣鴨の方に住んでいて、よく新宿まで歩いて行って、有名なライブハウス「新宿ピットイン」で若手のミュージシャンの演奏を聞いた。毎日三度のステージがあり、朝の11時ぐらいから始まる一回目はワンドリンク付で500円、二時ぐらいからの二回目は同じく800円と安かった。そして、夜の部のみ、2000円とか、それ以上とる有名ミュージシャンが出演するのである。
昼間の部は、若手の人の練習みたいな感じで、ぼくにはそれも素敵だった。
夜の部でも、いろんな人の演奏を聴いたと思うが、具体的にはほとんど覚えてない。
ぼくは、昔のことは、みんな忘れてしまうのだ。
ただ、いまピアニスト、作曲家としても活躍している加古隆が、ここで演奏をやったことがあった。ジャズファンの聴衆たちには、どうも受けがよくなくて気の毒だったが、ぼくはものすごく感動したことを覚えている。それから名前が売れるまでに、加古さんは、結構時間がかかったと思う。