最近の総連等への弾圧的捜査について

長居の行政代執行やコメント欄のことやらがあって、なかなか書けなかったが、ずっと気にしていること。
六カ国協議が先ごろ一応の妥結を見たが、それを睨むかのように、このところ朝鮮総連や関連の施設、学校への警察による強制捜査が続いてきた。


近いところでは1月28日には滋賀、2月5日には札幌、そして2月6日には兵庫。
それぞれ「電磁的公正証書原本不実記録容疑」(いわゆる「車庫飛ばし」)、「脱税容疑」、「税理士法違反容疑」により総連の関係者が逮捕されたことを理由として、総連本部や商工会などが捜索を受けたのである。
http://news.www.infoseek.co.jp/kyodo/society/story/28kyodo2007012801000269/
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070205&j=0022&k=200702053758
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000234627.shtml


警察の発表とマスコミの報道を見る限りでは、逮捕も捜査も当然のことと思われるかもしれない。
しかし、六カ国協議が行われようとしていたこの時期に立て続けに各地で総連の関係者が逮捕され、総連本部などに強制捜査が入って書類や名簿などが一切合財持ち去られる。
この捜査の背後に政治的な意図がないと考えるほうが難しいだろう。
げんに、今年の1月18日、安倍総理の親友ともいわれる漆間巌警察庁長官は、次のように発言したそうだ。

北朝鮮が困る事件の摘発が拉致問題を解決に近づける。そのような捜査に全力を挙げる」「北朝鮮に日本と交渉する気にさせるのが警察庁の仕事。そのためには北朝鮮の資金源について事件化し、実態を明らかにするのが有効だ」


この情報の出処を調べてたら、なんとここで見つけた(真ん中ぐらいです)。
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070128/srn070128000.htm


外交交渉のために、北朝鮮を困らせるため、資金源について「事件化」するのが警察の方針だそうである。
公約どおり、それが実行されてるということだろう。


つまり、上記の逮捕容疑が「でっち上げ」だと言える根拠はないが、少なくともそれを理由にした総連本部や関連施設への強制捜査は、いわゆる「別件」であり、政治的な意図を多く含んだ、強引きわまるものだといえよう。
しかも滋賀の場合、いわゆる「車庫飛ばし」を理由にした警察の捜索は、朝鮮初級学校(日本の小学校にあたる)にも及び、百人を越える武装した警官が学校に入って生徒の父兄の名簿などを持ち去ったという。
この状態は、もはや「弾圧」という言葉があてはまるものだが、マスコミなどからは、ほとんど批判の声は聞かれない。
これは、たいへんな事態だと思う。


警察の言い分、その行動を支持する人たちの言い分は、「ミサイル製造につながる本国への送金ルートの摘発」ということだろう。
たとえそういう理由があっても、このような強引な警察のやり口を認めてはいかんと思うが、上の警察庁長官の言葉をみると、そもそもそれも口実にすぎず、たんに政治的な理由、とりわけ現政権の人気取りにつなげることを目的として、このような強権の発動が行われてるんじゃないかと思える。


いずれにせよ、総連の件に限らず、このところ警察による強引な捜査は目にあまるものがあるが、それをチェックするマスコミなどの機能がまったく働いていないように見えるのは、ほとんど許しがたいことに思える。
こういう弾圧的な行動によって、現実に多くの人が不安に震えたり、絶望したりしているだろうから。
とくに、「北朝鮮」をめぐる事柄では、このような「法」や「治安」の名による無法と、その黙認という事態が展開しやすい現実がある。総連や朝鮮学校に関わりがあろうとなかろうと、在日朝鮮人が置かれている現在の立場は、不安に満ちたものであることは疑えない。
自分たちの社会のなかの、もっとも脆弱でありうる、もっとも弾圧や攻撃にさらされやすい人たちの権利と安全を守ろうとする注意深さこそが、その社会を人間の側に引きとどめる条件であると思う。