10日の集会とデモの感想(末尾追記)

10日の土曜日に大阪で行われた、ガザ侵攻に抗議する集会とデモに参加しましたので、その報告というより、感想を書きます。

http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20090107/p2


参加人数は、報道されてるように500人ぐらいだったと思う。
これは、最近の大阪のデモとしては、ぼくが参加したなかでは人数が多かった。
米軍のイラク攻撃がはじまる直前が、やはり一番多かったと思うけど、あれほどたくさんの多様な人が集まってるという感じではないけれども(また大きな組合などの組織色も薄いが)、集まった人たちそれぞれの強い思いが感じられる、いい集会とデモだったと思う。


ガザに住んでいる人の言葉(電話の録音)が場内に流され、翻訳された後、岡真理さんのスピーチと、呼びかけた各団体のアピール。
どの人も自分の言葉で話してたように思う。


その内容を紹介できればいいのだが、事情があって、ちょっと出来ない。
というのは、壇上に上がった発言者の言葉を流す大きなスピーカー、あれを「トラメガ」というのか、その重たいものを急にぼくが持たなければならなくなった。
ぼくは主催者サイドでもなんでもないのだが、近くに居たので急遽「手伝ってくれ」と声をかけられたのである。
ちょうど最寄の淀屋橋の駅を降りたとき、目の前をその「トラメガ」を持って歩いてる人がおり、「ああ、この人もきっと集会に行くんだな」と思ってたが、まさか自分が持つことになるとは思わなかった。
それで、持ったところ、慣れてないので持ち方がわからないせいもあるが、ともかく法外な重さである。
大事な話なので、落としてはいけないという緊張も加わり、それを持ってるだけで精一杯で、話の内容を注意して聞くどころではなかったのである。
今日になっても、まだ腕が痛い。
なので、内容をここで報告することは出来ないのです。
ほかに行かれた方が書いておられると思うので、是非そちらをあたっていただきたい。


さて、デモは、主催者側が当初申請していた予想人数(150人ぐらいらしい)を大幅に上回ったため、二つの隊列に分かれて出発する形となった。
今の日本の法律では、デモには色んな規制がある。
ちなみに、大阪では、この中之島公園と、扇町公園が、代表的なデモの出発地点である。これは、他の参加者の方から聞いた話だが、中之島を出発点とした方が人通りの多いところを通れるのだが、この公園はデモ出発前の集会に使用できる時間に厳しい制限があるので、それが緩い扇町公園の方が使用されることが多いそうである(そう言えば、イラク戦前の大規模なデモのときの出発点は、扇町だった。)。
実際、この日の集会のときも、警官が何度も、「もう出発するように」と主催者をせかしに来ていたようである。


それで、ぼくは全体の最後尾のあたりを、知ってる人たちと一緒に歩くことになった。
出発するとき、会場の一隅に、誰が作ったのかべらぼうに大きなパレスチナの旗が結わえ付けてあったのだが、みんな持っていくことを忘れたようで、あやうく置き去りになりそうだったのが、少しユーモラスだった。
この旗は、結局、ぼくの友達などが気づいて掲げた。


この日のデモは、ぼくがこれまで経験した数少ないデモのなかでは、たいへん平穏なものだったと思う。それがいいとか、悪いとかいうことではない。
御堂筋を北上するこのコースでは、アメリカ領事館前が、唯一と言っていいポイントだ。イラクのときのデモでは、デモ隊のなかの一団と警察がもみ合いのようになり、ぼくは周りに子どもたちも居たので、巻き添えにならないようにかばったり、自分が逃げたりしていたものである。
そういうことはなかったが、この日も領事館前ではさすがに、みんな足をとめて、怒りの声をあげていた。
ちなみに、イスラエルの領事館*1は神戸にもあるらしい。


ところで、デモ隊の最後の方が交通をとめて車道を横切っていたとき、それに苛立ったらしい一般の人の車が激しくクラクションを鳴らすという場面があった。
この時が、一番全体に緊張が走ったのではないかと思う。
警察との衝突のようなことは、ぼくの知る限りではこの日はなく、むしろ一般の市民からの苛立ちみたいなものが、デモ隊に差し向けられてる感じを持った。
もちろん、表面化したのは、この些細な出来事だけだったのだが。


それで、このクラクションを聞いたとき、それはぼくのすぐ後ろの方で鳴らされてたはずだが、正直、苛立って鳴らす気持ちも分かる気がした。
鳴らした人に急ぐ用事があるかないか知らないが、交通を遮断してノロノロ(と思っただろう)歩くデモ隊は、その人にはきっと腹立たしいであろう。
ぼくなら、急ぎ足で歩くだろうし、正直、みんなそのぐらい気を利かせればいいのに、とも思った。


だが今になって考えると、ガザというところで無法な虐殺が行われており、そのことを広く知らせ、社会に呼びかけるために、交通を一時止めてでもデモを行うという風なことは、必要なことだ。
そこで(ぼくが迎合しようとしたように)日常のルールに合わせるように、また警察が「交通の迷惑にならないように」と言ってせかせるように、早足で歩いていたら、虐殺を止め、この暴力的な社会を変えていこうという目的に向かうことはできなくなる。


デモ参加者以外の人たちに迷惑がかからないようにという言い分は、それ自体では間違いではないだろう。
だがこの場合、迷惑がかからないように行動することが、虐殺を止め、社会を良い方向に変えていくことを阻害する、もしくは自ら抑え込むことになりかねない。
意味もなく迷惑や摩擦をかけていいとは思わないが、基本的に、「迷惑をかけない」というようなルールで成り立っているこのわれわれの社会が、「ガザの虐殺」のような巨大な暴力を、見えないところで支えているという構造は、ある。
それは、もっと国内的な、日常の生活においても、言えることのはずである。
「迷惑をかけないように」と言って死んでいく人、行かされる人が、この国ではどれだけ多いことか。


だから「迷惑をかけろ」と言いたいわけではない。
そう言ってもいいかも知れぬが、それは瑣末なことだ。
大事なのは、大きな暴力を止めるためにどうすべきかを、常に考えながら行動することだ。
ぼくには、そういう気持ちが足りないのだと思った。


そして、どの人も、「迷惑をかけないように」という気持ちと、「大きな暴力を減らしたい」という気持ちとの葛藤のなかで、きっとデモをしたりしなかったりするのであろう。
見ていて、若い参加者のなかには、隊列から外れて歩道に出て(これが出来るぐらい警備が緩かった。警察も人員の準備が出来なかったのかも?)、通行者のビラを配ったりしてる人があったが、偉いなあ、と思った。
その人たちも、みんな色んな葛藤を抱えながら、ときにそれを振り切るように、多くの人たちのために、ああいう積極的な行動をするんだと思う。




ところでデモの後、多くのブロガー仲間の人(もちろん、大半が「はてな」です)と、その場ではじめてお目にかかることとなり、予想してなかったので、驚いた。
正直、呼びかけ団体のいくつかより「動員」が多かったんじゃないかと思う(笑)。
冗談抜きで、流石だと思った。


追記:F1977さんのところに、立派な報告が出てました。お読みください。


http://d.hatena.ne.jp/F1977/20090111/1231645697


まったくお恥ずかしい・・・。

*1:ただしくは、「名誉領事館」。黒猫さん、訂正ありがとうございました。