二つの事実

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080603/crm0806031443030-n1.htm

金子容疑者は同日午前11時40分ごろ、立てこもっていた乗用車内で所持していた拳銃でこめかみを撃って自殺を図っていた。拳銃は大口径のトカレフとみられ、即死状態だったとみられる。


http://mainichi.jp/photo/news/20080603k0000e040054000c.html

拳銃を所持したまま車内に立てこもっていたもう1人の自称、金子謙容疑者(55)は、約9時間後の午前11時40分ごろ、拳銃で頭を撃って自殺を図ったところを銃刀法違反容疑の現行犯で逮捕された。病院に搬送されたが、午後1時半ごろ死亡が確認された。


書き方にだいぶ違いがあるけど、いずれにせよ、自殺を図って瀕死の状態になった後に、警察に身柄を拘束されたということだろう。
それなら、身柄の確保には事実上失敗してるのである。そしてこれは、「逮捕」というよりも、救助(救命)だ(この点、産経はやや異なるようだが、たとえばNHKは上記毎日と同様の表現をしていた。)。
警察は、「逮捕には成功した」ということを強調したいから、「逮捕した」という言い方をするだろう。だが身柄を拘束したときには、「即死状態」だったか、もしくは意識不明のような状態だったはずである。
そして、そういう状態の人を、ともかく病院に搬送して助けようとした。「死ねば警察の失敗になりかねない」という事情があったからにせよ、とにかく命を救おうとしたわけである。
頭を銃弾で撃ち抜いて瀕死の状態の人を「逮捕」したという事実(だったかどうかも疑わしい)と、凶悪事件の犯人であるとはいえ瀕死の人を救助(救命)しようとした事実と、どちらが重要かといえば、ぼくは後者だと思う。
そもそも、こういう状態の人を「逮捕」した(または失敗した)事実が、その人を「救助」(救命)(しようと)した事実よりも先に来るという価値観が、ぼくには受入れがたい。
新聞やテレビが、そういう警察の発表の文言を、そのままなぞっていることが、不快である。