本を読むよろこび

『所有と国家のゆくえ』(NHKブックス)がとても面白かったので、立岩真也の『自由の平等』という本を買ってきて読んでいる。
『私的所有論』の方を先に読むべきなんだろうが、とっつきやすそうなこちらの方を買った。


ほんとうにいい本というのは、新しい知識や認識や感覚が得られるというだけではなくて、自分が遠い昔に知っていて、いつか忘れてしまっていた事を思い出させてくれるような感じがある。それは、おりのようなものが溜まって、そんなことを知ってたということ自体を忘れていたかのような感じがするのである。本を読んでいるという沼のような場所に深く身を沈めると、その昔の(たぶん幼い頃の)自分を目の当たりに出来るようなゾクゾクする感じがあるから、引き込まれて読むのだ。
ここでは、本を読むことは、なにか新しいものを得るという「プラス」の体験ではなくて、不要なものを取り除いていくという「マイナス」の体験でもある。
この立岩の本も、そういう時間を体験させてくれる。

もう一つの条件は、生産と分配、それと人との関係についての価値・規範のあり方である。問題にされ批判される規範には、リベラリズムも容易に抜けることのない、人の力とその産出物と人の存在とを結びつけてしまう規範が含まれる。既にその人が存在していることで十分であることを認め、その上で自らを作っていく自由がある、あるべきだと言えばよい。自らを作り、表象することが自分が世界に在ることと同じ位置にあるのではない。(以下略)    (p15 序章より)


自由の平等―簡単で別な姿の世界

自由の平等―簡単で別な姿の世界