『Marines Go Home 辺野古・梅香里・矢臼別』感想

監督をはじめ、ある意味「身内」のような人がおおく関わってる映画なので、正直あんまりよくなかったらどうしよう、と心配だった。
いい仕上がりだったので、ホッとした。これなら人にすすめられる。


沖縄の辺野古、米軍の巨大な訓練場がある韓国の梅香里(メヒャンニ)、それに自衛隊の演習場があり米軍の海兵隊も訓練をおこなう北海道の矢臼別。
米軍再編の、同時にもっと広くいえば国家と社会というもののあり方の世界的な変容のなかで湧き起こっている荒波を、いわば岬の突端のような場所で感受し、苦しみ抗っているともいえる、これらの(ぼくらの多くにとって)聞きなれない名前の土地に暮らす人々の、あるいは激しく、あるいは痛々しく、またあるいは静かすぎるほどに穏やかな感情の動きや心の襞を、丁寧に見つめようとする作り手の眼差しが伝わってくる映画だった。
スクリーンから見えてくるのは、人々が力をあわせて巨大な理不尽な力に抵抗し、その抵抗することのなかでお互いがぶつかり合い、その過程のなかで浮かび上がってくる、最終的には一人一人の生きている小さな個別なありようのようなものだったと思う。
自分や親しい人たちが生まれ育った土地を守るために抵抗する人たち、故郷の自然への深い愛着を語る人、別の土地からさまざまな思いを抱いて支援に訪れたたかおうとする人々、たまたま縁あって住み着くことになった土地で自分の生き方を次第に見出していった人、自分の土地の苦しみをイラクアフガニスタンという異郷の人たちの悲惨に連関させて考え苦悩する人たち、それら、抵抗と葛藤、衝突のなかではじめて見出されていく多様な人間たちの生きる姿すべてを包み込むように、映画の冒頭とラストには北海道の広大な原野とそこに生きる動物たちの映像が映し出される。
この映画は、とくに平和運動などに関わっている人たちに見てほしい映画でもあるが、
今こうした時代だからこそ、より多くの若い人たちに見てもらいたい作品だと思った。


大阪では今月12日まで十三の第七芸術劇場で。
6月3日から22日まで東京のユーロスペースで。その後、下北沢でも。また、六月には京都のいくつかの大学で学生たちによる自主上映がおこなわれる予定。
また、この秋には監督自身アメリカにわたり、各大学で上映する計画を立てておられるそうです。
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