裕次郎伝説

母親が同じ歳(昭和九年生まれ)ということもあり、連日石原裕次郎の追悼番組を一緒に見る羽目になっている。


今日の教育テレビの番組(NHKアーカイブス)は、さすがに豊富な映像・音声資料を駆使して、民放では作れないような番組になっていた。
ゲストのなかにし礼の話も、とくに前半はたいへん興味深く、なぜ裕次郎が戦後の日本であれだけのスターになったのか、はじめて腑に落ちるところがあった。


それにしても、あれだけの体格をしていながら、晩年は大病続きで52歳で世を去った。元気だった40代の映像を見ても、顔がむくんで見えるのは、きっと若い頃からの酒やストレスで、体がぼろぼろだったのだろう。
(よくスターについて言われるように)辛いことがあれば人格破綻のように振舞えば、いくらか楽だったかもしれないが、そうはできず「完璧な人格」であり続けねばならなかったことが、もっとも辛かったのではと、想像する。
マイケル・ジャクソンのように陰の側面が表立って語られることはないが、大きな壁をなんとか突破しようとして、結局は潰されてしまったような悲壮な生涯だったのではないか。
大作『黒部の太陽』のラストシーン、トンネルを貫通させようとして落盤が起こり、噴出した大量の水に裕次郎が飲み込まれてしまう有名な場面は、この人の生涯を暗示するようなものにも思えてくる。
その全てが、美談のようにしか語られないということに、暗澹とした気持ちになる。


合掌。