何が「災害」か

ついこないだから、「不況」ということが言われ出して、当たり前のように大企業が非正規雇用の労働者を首切りし、自治体などが緊急に失業した人の救済策を打ち出して対応している、というニュースがさかんに報じられている。


まるで、「不況」だけが悪者で、「不況」になる前の企業の人の扱い方は人間的だったが、「不況」という不可抗力のために面倒が見られなくなったので、企業に代わってみんなで助け合ってる、というふうな感じである。


財源のない中で精一杯の救済策をとっている自治体の努力は、肝心の国が無策であるだけに、たしかに見上げたものだと思う。
だが、もともと財政に余裕もあるはずないのだから、せいぜい一人一ヶ月ぐらい臨時の仕事を提供し、その間に住むところと仕事を見つけてもらおうというようなことであろう。はっきり言って、応急手当である。
しかも、給料は一人12万とか、13万とからしい。
それでも自治体が出せる精一杯なのは分かるが、肝心なことは、もともと派遣労働者の多くがもらってた給料も、それとたいして変らない額だったはずだということである。


だから貯金もできず、部屋も借りられず、健康保険にも入れないで、首を切られたら即座に路頭に迷うようなことになったのだ。
そもそも「不況」になどならなくても、こんな労働条件で働かされてる、こんな金も保障もない生活を余儀なくなれてるということ自体が、労働者の立場から見れば「災害」みたいなものである。
この状況を根本的に変えることを考えないで、どうするのだ。


今の状況はたとえて言えば、海岸線ぎりぎりのところにバラックを作って住んでたら、台風が来て家ごと流されたので、他の人たちが救助に集まってるようなものである。
問題は、なぜそんな危険なところにバラックを建てないといけない人が居るのかということと、台風はなぜ起こったのかということの二つだが、この二つが連関していることは、みんなうすうす分かっているはずだ。