「サガレンと八月」

ずっとブログのトップにあげてきた、北海道での催しに参加するため、数日更新を休みます。今月の末頃に再開する予定です。


この集まりは、ずっと参加している人たちにとって、とても大切な場になっているので、自分もそこに行ってなにかができたらいいなあ、と思ってます。
遺骨の発掘といっても、今回は掘れる場所が限られているようなので、ぼく自身は発掘に参加できるかどうか分かりません。
話し合いや交流をしたり、友人たちにあったり、歌を歌ったりしてきます。


オホーツク海の近くに行くということで、宮澤賢治の「サガレンと八月」という短い未完の童話から引用します。

(前略)そしたら俄かに波の音が強くなってそれは斯(か)う云ったやうに聞こえました。
「貝殻なんぞ何にするんだ。そんな小さな貝殻なんど何にするんだ。何にするんだ。」
「おれは学校の助手だからさ。」私はついまたつりこまれてどなりました。するとすぐ私の足もとから引いて行った潮水はまた、巻き返して波になってさっとしぶきをあげながら又叫びました。
「何にするんだ、何にするんだ、貝殻なんぞ何にするんだ。」
私はむっとしてしまひました。
「あんまり訳がわからないな、ものと云ふものはそんなに何でもかでも何かにしなけぁいけないもんぢゃないんだよ。そんなことおれよりおまへたちがもっとよくわかってさうなもんぢゃないか。」
 すると波はすこしたぢろいだやうにからっぽな音をたててからぶつぶつ呟くやうに答へました。
「おれはまた、おまへたちならきっと何かにしなけぁ済まないものと思ってたんだ。」
私はどきっとして顔を赤くしてあたりを見まはしました。
(ちくま文庫版 『宮沢賢治全集 6』より)