先日、中沢新一の本の紹介のなかで、作家の高橋源一郎の名前を書いたが、この人が紹介していた本で、ぼくが一番面白く読んだのは、勝海舟のお父さんの勝小吉の自伝である『夢酔独言』だ。
この本は、東洋文庫というところでしか読めなかったのだが、数年前に平凡社ライブラリーからも出た。とにかく面白いとしか言いようのない本なのだが、どう面白いか説明するのが面倒なので、一節を引用しておく(一部、読みやすい文字に変えた)。
おれが名は亀松と云。養子にいって小吉となった。夫から養家には祖母がひとり、孫娘がひとり。両親は死んだのちで、不残深川へ引取り、親父が世話をしたが、おれはなんにもしらずに遊んでばかりいた。この年に凧にて前丁(まえちょう)と大喧嘩をして、先は二、三十人ばかり、おれはひとりでたたき合い、打合せしが、ついにかなはず、干かば(干鰯場)の右の上におい上げられて、長棹でしたたかたたかれて、ちらしがみになったが、なきながら脇差を抜て、きりちらし、所(しょ)せんかなはなくおもったから、腹をきらんとおもひ、はだをぬいで石の上にすわったら、其脇にいた白子やという米屋がとめて、内へおくってくれた。夫よりしては近所の子供が、みんなおれが手下になったよ。おれが七つの時だ。
よくわからないけど、無茶苦茶だ。
- 作者: 勝小吉,勝部真長
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2000/03/01
- メディア: 単行本
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