朝鮮のことについて

朝鮮民主主義人民共和国について、ひとつ書いておきたいことがある。


たしかに、この国でいま収容所に入れられている人が何百万人いるということが言われ、また大半の民衆が貧困や飢餓に苦しんでいるということが言われる。
それらは、おおむね正しい情報であろうと思う。


ただ同時に、この国が現在の体制においてあり続けることを、自分が生きていくうえで必要不可欠だと考えている人たちがこの国にどのぐらい居るのか、われわれには今のところ知りようがない。
この国の体制に外から圧力を加えていった場合に、この人たちの生にどれだけの影響があるのか、そしてそれに代わるものをわれわれは本当に提供できるのかということを考えることは、是非とも必要なことである。


イラクの場合でも、あれは侵攻という極端なやり方によったものとはいえ、多くの人々に危害を加えていたはずの独裁的な政権を倒すということはたしかに出来たのだろうが、それ以上の荒廃を、イラクの大地と人々の心にもたらした、という見方もあろう。
「人道」や「解放」の名において行われることであっても、その国の体制やそれにつながる独立の歴史を拠り所として生きている人たちにとっては、介入的な行為は、やはり破壊であり、侵略でさえありうることは、自覚しておく必要がある。
だからそのような(体制打倒につながるような)行動や考えが、反動的だとか、独善的だというわけではないが、やはり無条件の正義とか、非暴力の道のように言うことは、とても出来ないだろう、とは思う。


それでは、お前は収容所の何百万や、飢餓や貧困に苦しむ人たちを見捨てるのかと言われれば、今のところ、うなづくしかない。