Web評論誌『コーラ』の新しい号が発行されましたので紹介します。
広坂朋信さんの連載<心霊現象の解釈学>、今回は「父の怪談」というタイトルで書かれています。
(以下転載)
◆Web評論誌『コーラ』32号のご案内★サイトの表紙はこちらです(すぐクリック!)。
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---------------------------------------------------------------●連載:哥とクオリア/ペルソナと哥●
第42章 和歌三態の説、雑録──心・イマージュ・映画
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/uta-42.html
第43章 中間総括──古今集仮名序をめぐって
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/uta-43.html中原紀生
■心の四分岐をめぐって
雑録の一。第40章で、心と世界の四層構造に思いをめぐらせていた際、脈絡
なく同時並行的に読み進めていた三冊の書物の、それぞれから切り取った断片
が一つにつながっていった。そのことをここでとりあげる。(その1)
津田一郎著『心はすべて数学である』は、刺激的な話題に充ちた書物だっ
た。
(たとえばエピローグにでてくるチューリングと夏目漱石をめぐる議論は秀
逸。チューリング・テストは本来「機械か人か」を当てるゲームではなく「男
か女か」をテストするものだった。マンチェスター工科大学近くの銅像には
「偉大なるロジシャンにしてホモセクシャルで論理学者のチューリングに捧げ
る」と刻まれている。自分は男なのか女なのか、いったい男と女は何が本質的
に違うのかという実存的な悩みに直面したチューリングが自分のような人間の
表現形として、生物としてのセックスのない中性的な機械を考えた。これと同
じように、ただしチューリングとは逆に、漱石は西洋と東洋の差異という実存
に迫る深い苦悩をモチベーションにして男女の性(恋愛)をめぐる小説を書い
た。漱石が描く女性は西洋近代を象徴していて、東洋的で優柔不断な男性たち
を独特のロジックでやり込め、たじたじにさせたのである。)(Webに続く)http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/uta-42.html
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●連載〈心霊現象の解釈学〉第10回●
父の怪談
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/sinrei-10.html
広坂朋信仕事帰りにスーパーで買い物をしていた私の携帯に老母から電話。何事だろ
うと思って出ると、「お父さんが帰って来て、自分の寝るところを探している
から、お前にすぐに伝えようと思って」という。
老父は昨年冬に認知症で入院してから、入院中に肺炎を起こして何度も危篤
におちいり、今も病院のベッドで寝たきりである。
「それは夢を見たんじゃないの。お父さんのことを心配しているからだね」と
言い聞かせるが、実はこの日の朝、母から「玄関でお父さんの声がする」と電
話があったものだから、ついに老母もか、と不安を覚えていた。
しかし、考えてみると、こうした話は今にはじまったことではない。もう一
年ほど前になるだろうか。父の認知症が疑われはじめたころ、実家に立ち寄る
と、父が「ふすまの向こうに婆さん(父の母・故人)がいる。白い手を出して
おいでおいでをする」という。そういう話をしていたら母が、「夢を見ていた
のか、寝ていると誰かが私の布団のまわりをぐるぐる歩いている。誰だろうと
思ってみると、父(母の父・故人)が歩いている。お父さんが何人も何人も
……」というのであっけにとられた。
私の両親には以前からこういう話題を口にする傾向があった。とくに母に
は、夢を一種のお告げのようにとらえる傾向がもともとあって、これまであま
り気にも留めていなかったが、後期高齢者になってからますますそういう話が
増えたような気がする。
両親ともに、もう六十年近く東京で暮らしているわけだが、昔気質な人たち
で、世間話にもどこか民話のような響きがあって、閑なときに聞くぶんにはよ
いものである。
閑話休題。夏の暑さに寝苦しい夜が続く。私の家族の与太話よりも、まずは
怪談の名手による作品をお読みいただこう。(Webに続く)http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/sinrei-10.html
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●連載「新・玩物草紙」●
吉増剛造はムツカシイ?!?/エンド・ゲーム
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/singanbutusousi-36.html寺田 操
吉増剛造はムツカシイ……と敬遠されていると小耳にはさんで、何かゴツン
と頭を叩かれた気がした。若い日には、これは何だと驚愕した詩と詩人たちと
の出会にこそ興奮したものだが。
吉増剛造『黄金詩篇』(思潮社/1970・6・1)赤瀬川原平の装幀に度肝を抜
かれた。水紋のなかから黄色い指がヌット突き出し、その指の爪の先にも水紋
があり、なでしこのような花首がいくつも散っていた美しくて不気味な絵だ。
扉を開けば吉増剛造の青いペン書きの詩篇。完成された作品ではなく、書き込
みや削除などの痕跡が生々しいが、これもお気に入りだった。(Webに続く)
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/singanbutusousi-36.html---------------------------------------------------------------