『私はあなたの二グロではない』

『私はあなたの二グロではない』という映画を見た。
これは、アフリカ系アメリカ人の作家ジェームズ・ボールドウィン(男性同性愛者であることも明かしていたという)の文章と発言の映像を軸にして、米国の黒人差別と解放運動の歴史を描いたドキュメンタリー。
キング牧師マルコムXなどボールドウィンと親交のあった著名な活動家の男女(キングやマルコムと同様にやはり30代で亡くなった有名な女性運動家も出てくるが、名前を忘れてしまった)も登場する。
ボールドウィンの米国社会に対する分析は、一つの社会がどういう仕組みや事情でどうしようもなく差別的になるのかということをきわめて正確に見抜いているので、他の社会にもそのままあてはめられる。見ていて、明治以後の、そして特に今の日本社会のことを語っているようにしか思えない所があり、震撼した。
未発表に終わったというボールドウィンの草稿の朗読は、サミュエル・L・ジャクソンがやってるそうだが、集会やテレビショーに出た時のボールドウィン自身の肉声と表情が強烈な印象を残す。
あれほどの困惑や恐怖、自分の住む社会と人間に対する絶望の表情を、ほとんど見たことがない。