二つの言葉

毎日新聞3日付け朝刊一面のコラムより。


余録:政治とは…http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/news/20080903k0000m070137000c.html


最初のところに、ガルブレイスシラクの言葉が並べてあるけど、この二つの言葉は、ぼくにはまったく異なる意味合いを持ってるように思える。
でもなんとなく、同様の言葉として紹介されてるような感じである。


ガルブレイスの「政治は可能性の芸術ではない。悲惨なことと不快なことのどちらを選ぶかという苦肉の選択である」というのは、苦肉の選択であってもどちらかを選ばなければならないということと、どちらを選んだにしても十分に正しい選択などというものはないのだという、ややシニカルではあるが、現実に対する謙虚さを感じさせるところのある言葉である。


一方、シラクの「政治は可能性の芸術ではない。必要なことを可能にする術である」という言葉は、文脈が不明なのではっきり分からないが、「不可能を可能にする」というような、そこまでいかなくても、「可能にする」ことに伴う弊害は何もないとでも言っているような、現実に対するおごりを感じるのである。
これは違うのかもしれないけど。


これは、あくまでぼくが紙面を一瞥したときに受けた感じである。
つまり、一言で言えば、ずいぶん受ける感じ、その重みのようなものの違う言葉が、無造作に並べられてる、という印象を受けた。
ガルブレイスの言葉は、キューバ危機のときのものだそうだが、シラクの言葉は、いつ頃のものだろう?
ぼくの受け取り方が正しいとすると、それは90年代以後のものではないかと思うのだが。


ぼくには、この二つの言葉の間の隔たりは、ずいぶん大きいように思うのだが、もちろんそこには時代の変化も関係してるはずだとも思うのだが、現在は、この時代的な隔たり自体が、ほとんど感知されないような社会になってる、ということだろうか?
このコラムを読んでいて、そんなことを思った。


もちろんこれは、二人の政治姿勢の違いというだけの話ではない。
実際、この二人の政治的なスタンスは、そんなに変らないであろう(ぼくから見れば)。
だが、この二つの言葉は、ぼくにはまったく違った種類の言葉に思えたのである。