『私はあなたの二グロではない』

『私はあなたの二グロではない』という映画を見た。
これは、アフリカ系アメリカ人の作家ジェームズ・ボールドウィン(男性同性愛者であることも明かしていたという)の文章と発言の映像を軸にして、米国の黒人差別と解放運動の歴史を描いたドキュメンタリー。
キング牧師マルコムXなどボールドウィンと親交のあった著名な活動家の男女(キングやマルコムと同様にやはり30代で亡くなった有名な女性運動家も出てくるが、名前を忘れてしまった)も登場する。
ボールドウィンの米国社会に対する分析は、一つの社会がどういう仕組みや事情でどうしようもなく差別的になるのかということをきわめて正確に見抜いているので、他の社会にもそのままあてはめられる。見ていて、明治以後の、そして特に今の日本社会のことを語っているようにしか思えない所があり、震撼した。
未発表に終わったというボールドウィンの草稿の朗読は、サミュエル・L・ジャクソンがやってるそうだが、集会やテレビショーに出た時のボールドウィン自身の肉声と表情が強烈な印象を残す。
あれほどの困惑や恐怖、自分の住む社会と人間に対する絶望の表情を、ほとんど見たことがない。

『ポスト・オリエンタリズム』

ポスト・オリエンタリズム――テロの時代における知と権力

ポスト・オリエンタリズム――テロの時代における知と権力

近所の図書館にあることを知って、さっそく読んでみた。

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『ゾルゲ事件とは何か』


だいぶ前から読みたかった本だが、先日、やはり図書館で借りてきて読んだ。
僕は引き込まれてあっという間に読んだが、密度がすごいので、本を読みなれてない人には、とっつきにくいかもしれない。

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『ヴァレンシュタイン』

このごろ私どもが眼にするのは、
かつて百五十年前、ヨーロッパの国々が、
悲惨な三十年戦争尊い成果として喜び迎えた、
堅牢なはずの古い秩序が崩壊している姿です。
そこで、いまいちど詩人の空想を動員して、
あの暗かった時代を皆さま方のお眼の前によみがえらせ、
御一緒に、いまより朗らかな気持で現代を眺め、
希望に満ちた遠い未来に眼を向けようではありませんか。


 これから御披露する作品で詩人は、皆さま方を、
あの戦争の真っ只中にお連れいたします。
荒廃と略奪と悲惨の十六年が過ぎましたが、
世間はいまだ混沌を極め、
遠くを望んでも、どこにも平和の希望は見えて参りません。
国土は武器のたまり場と化し、
町々は荒らされつくして、
マクデブルクは廃墟となり、商工業も技芸もどん底の状態、
市民はもはや一文の値打ちもなく、怖いものなしは軍人ばかり、
天をも恐れぬ破廉恥が良俗を嘲笑し、
長い戦さで凶暴化した荒くれどもが、
荒廃した大地にのさばっております。(p17〜18)

ヴァレンシュタイン (岩波文庫)

ヴァレンシュタイン (岩波文庫)

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バーリン『自由論』

自由論

自由論

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『生政治の誕生』(読了)

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